特集:正統な都心をつくる――虎ノ門タワーズ レジデンス&オフィス

Chapter 3  築かれる理想
「超高層邸宅」の建築美
 「中枢を生き,中枢に住む」がメインコンセプトの虎ノ門タワーズ レジデンス。41階建て(地下2階),総戸数267戸,29タイプのバリエーションをもつ住宅は,現在第2期販売まで行われている。最近のトレンドである湾岸部の高層マンションとは一線を画した,“超都心”の立地とそのポテンシャルを活かした計画に,モデルルームの来場者の評価も高いという。
 まず目を惹くのは塔状比7:1という非常にスレンダーな外観。緊張感と温かみのある白色のコンクリートフレームがスマートな建物を包んでいる。この形状と耐震性を両立させるために,あらたに開発したチェーンド・チューブ構法を採用した。これは複数のチューブ構造を横に連結していく構法で,柱を周辺部に寄せることで強度をもたせることと,内部には最小限の柱のみによる広がりある居住空間が生まれている。
虎ノ門タワーズ レジデンス
正統な建築
 建築設計本部・北典夫グループリーダーは「最も重視したのは,いわゆる流行を追ったデザインを一掃し,伝統と革新性を両方備えた『正統な建築』をめざしたこと。“超高層邸宅”の上質さの表現は,高い天井,フラットな納まりといった空間性から,自然な風合いを生かした素材のしつらえなどにも表れていると思う」と語る。
 シンプルな住空間を演出するのは最大2.1mという高さ,三連で幅が4.6mにもなる大きなガラス窓であり,心地よい開放感が広がる。内装は白を基調とし,住み手が自由にインテリアを選べるように“白いキャンバス”となることを徹底させた。床材・面材の素材は本物志向にこだわり,大理石,フローリング,カーペットなど,世界中から厳選されたものが用いられている。
 また屋上階には風揺れを抑えるアクティブ制震装置DUOXが2台設置され,構造躯体のうち低層の外柱に超高強度コンクリート(設計強度100N/mm2)を採用するなど,快適な居住性をハード面からも支えている。
構造とインテリアが一体となってほぼ床から天井までという,大きな窓が見渡すかぎり広がる眺望を可能にした
トラバーチン(大理石)の床,ウォールナットの面材という本物志向のインテリア チェーンド・チューブ構造。一般的なラーメン構法(上)の内部の柱を短辺方向に効率よく配置し,同じ本数の柱を矩形チューブ架構に収めている
タワーマンションの頂点をめざして
 都心居住のイメージを新たにつくりあげる虎ノ門タワーズ レジデンスには,居住性にホスピタリティを加味した。歩車分離が徹底されたアプローチから入れば,ホテルオークラ東京のレセプショニストが出迎える。エントランス横のクリスタルラウンジにはバカラ製のシャンデリア。25階ゲストルームとスカイラウンジには,都会の喧噪を逃れる上質な時間が流れる。
 また,隣接するホテルオークラ東京と提携し,ケータリングやランドリーなど,さまざまなサービスを提供する。まさにホテルとひとつの街をつくりだしているのである。タワーマンションの頂点たる魅力に溢れている。
東側の「四季の森」。既存の樹木を生かし,邸宅の森の雰囲気を醸し出すよう植樹を加えた 「ゼニス(天頂)」という名のバカラ製シャンデリアが4基,華麗な輝きを放つ
ホテルオークラ東京のレセプショニストが出迎えるロビー。トリプルオートロックシステムを採用し,高度なセキュリティにも対応している
居住者が利用できる25階のゲストラウンジ
テナント・オリエンテッド
 近隣を見渡せば政府機関が集まる永田町・霞が関,グローバル企業が数多く立地する赤坂・溜池山王に囲まれた,利便性の高いエリアに立地する虎ノ門タワーズ オフィス。11月から開設されているモデルルームを訪れる企業関係者も多い。
 ここではオフィススペースの使い勝手を最優先にプランニングを行った「テナント・オリエンテッド」をコンセプトに,機能性と快適性を追求した。たとえばエレベータコアを独立配置させているのはその最大の特徴である。凹凸が少なく,整形なオフィススペースはフレキシビリティを確保することができる。
 また,オフィスビルとしては秋葉原のUDXとダイビル(当社設計・施工)につづき東京都で3件目となるハートビル法適用プロジェクトとして,さまざまな利用者に配慮した空間を計画している。
虎ノ門タワーズ オフィス
低層階基準階の平面図。フレキシブルなレイアウトが可能なだけでなく,サービス動線を明確に分けている
超高層で窓を開ける
 環境配慮は,いまや建設界のキーワードとなっており,さまざまな環境技術やCASBEEなどの環境評価指標の導入によって,サステイナブル・デザインがつくりあげられている。虎ノ門タワーズ オフィスでも外観は全面がガラス張りと,非常に透明感溢れる美しいファサードであり,超高層ビルで初のダブルスキン・カーテンウォールとなっている。フロート板ガラスとLow-E複層ガラスによるファサードは,2枚のガラスに挟まれた中空層に外気を採り入れて還流させることで,日射による負荷を減らしている。とくに西向きの日照対策として高い断熱効果を期待している。
 また,春・秋の中間期にはインナーサッシュの換気パネルを開けることで,超高層でありながら自然換気が可能となった。素晴らしい眺望に加えて,外気を感じることのできる画期的なオフィスである。

新たなビジネスシーンへのコンテンツ
 23階建て,専有面積約1万坪,基準階で約1,500m2(約450坪)の無柱フロアというオフィススペースは,天井高2.8mという開放的な高さに加え,3.6mの基本モジュールで,60cm×60cmのグリッド天井システムを構成している。また各種のオフィスのニーズに対応できるよう高い設備容量も確保した。建物全体では,耐力・耐火性に優れるCFT(Concrete Filed Steel Tube:コンクリート充填鋼管)柱を採用し,制震装置HiDAX-uを組み込んだ。コンピュータ制御により地震や風揺れを軽減,オフィスワーカーやビジネスを安全面からもサポートする。
 また,NPI(New Passenger Interface)と呼ばれる最新のエレベータ制御システムが導入され,出勤時に起こりがちなエレベータラッシュを解消する。
 新たなビジネスシーンの舞台として,21世紀型オフィスビルのメルクマールとなるコンテンツが豊富に盛り込まれているといえよう。

 9月13日にはオフィス棟の,そして12月14日にはレジデンス棟の上棟式を経て,来年秋の竣工へ向け,現在開発,設計,現場が総力を挙げて築きあげている虎ノ門タワーズ。新しい都心のシンボルになる日をめざす――。
超高層ではじめて導入された外気導入型ダブルスキンカーテンウォール
ドイツのファサードエンジニアリング技術を採り入れている エントランスホールで利用者がエレベータに乗る前に目的階を入力することで,効率よくエレベータが運行できるのがNPI。ニューヨークに建設予定の7 World Trade Centerにも導入予定という
1フロア1,500m2以上,奥行きが18m,天井高2.8mという無柱の開放的なオフィス



Chapter 1 伸び上がる建築
Chapter 2 積み重なる歴史
Chapter 3 築かれる理想