足掛け4年に亘って進めてきたプロジェクトも,来年1月の完成が近づいてきました。自分が手掛けた風車が,これほど世間から注目され,頻繁に取材を受けたりすると,嬉しいやら心配やら,複雑な心境です。
このプロジェクトは調達を含む設計・施工ですので,一般的な土木・建築工事の請負にあたる部分が全体の一部にしかなりません。フルターンキー契約の交渉や,プロジェクト独自の契約書の作成,風車の選定やタワー高さの決定といったエンジニアリングまで,業務は多岐にわたりました。今までの現場経験はもちろんのこと,アメリカの大学院や現地法人で学んだこと,出向先の日立製作所での業務など入社してからの全てが活かされたと実感しています。また事業者,鹿嶋市,住友金属工業をはじめとする地権者,近隣の皆様,ガメサの輸入代理店である東芝プラントシステム,そのほか工事関係者のご協力に大変感謝しています。
環境本部でプロジェクトを作り込んでいた1年半はエンジニアリング業務に追われ,着工してからの1年は現場で工事に追われる毎日でした。特にメインとなる風車据付の3ヵ月は土日無しの生活で,始まってしまえばあっという間でした。これから引渡しまでの試運転・調整,さらには保証期間の運転と,まだ業務は続きます。
工事を進める上では色々なことがありました。その一つに,ガメサ・エオリカのエンジニアとの言葉の問題がありました。多いときにはスペイン人を中心に8人の欧州人が現場に従事しましたが,彼らの会話はスペイン語で,しかも2〜3人しか英語を話せなかったのです。そのため現場でトラブルがあった時でもメーカー側,施工側の両方で英語が分かる人間が出て行かなければなりませんでした。しかもそれがナセルの中の場合には78m上まで梯子を登らなくてはならなくて…。
また,スペイン製の風車だけに部品や工具一つでも,あるいは潤滑油などもスペインから取寄せなければなりません。風車のウインチを動かす690Vの発電機は日本には無いとか…。こうした対応に追われ続ける日々でした。
現在,最終段階となる風車の試運転・調整を行っています。風車を動かして,不具合が出たら原因を潰していくという作業の繰り返しです。風車の各部からコンピュータに送られる信号は,1基あたり400以上もあります。その信号がおかしければエラーメッセージが出て,風車は自動的に止まります。自然が相手ですから,時間をかけて解決していくしかありません。こうした取組みや対応は,当社にとって貴重なノウハウとして蓄積できたと思っています。今後の風力発電のプロジェクトにも活かされることでしょう。
日本は国土が狭いため立地可能な地点が限られていますが,今回のような工業団地の中にウインドファームをつくったことは同様の事業化に道筋を与えたことになり,非常に意義があったと思います。今後は自然公園,国有林など,今まで規制が厳しくて建設が困難だった場所や洋上へと,立地が広がって行くでしょう。 |