特集：まもなく完成，サミットウインドパワー鹿嶋発電所

発注者であるサミットウインドパワー鹿嶋の溝渕寛明社長，ガメサ・エオリカで据付工事を担当したベン・オフロ・ウィックボム サイトマネージャー，そして地元のＪリーグ・鹿島アントラーズの大東和美社長の3人に，この事業にかける意気込みや建設時の思い出などを語ってもらった。

私どもの親会社である住友商事は，事業活動を通じて環境に貢献するとの方針のもと，風力発電事業にも1998年から取り組んできています。サミットウインドパワー鹿嶋発電所は，その2番目の風力発電事業です。 　風力発電事業では，風力に適した候補地を探すことから始め，地元関係者や電力会社などとの協議を重ね，プロジェクトを組成し，ようやく建設に着手できるわけで，実際の運営を始めるまでに，息の長い様々なプロセスが必要です。 　このプロジェクトでは，2004年に営業運転を開始した山形県酒田市での第1号プロジェクトで培った港湾設備周辺での建設ノウハウを活かして進めてきました。工業団地内に風車を配置するという，全国初の試みでもあったため，多くの地権者とのコンセンサスが得られるかが大きな課題でした。 　そもそも，この事業の目途がついたのも，プロジェクトの意義を理解いただき，ご支援いただいた地権者の皆様のお陰です。また，プロジェクトの節目に説明会などを開催し，地元住民の方々とのコミュニケーションも大事にして参りましたが，皆様からも温かいご理解をいただくことができました。こうした皆様方のご理解，ご支援に改めて感謝申し上げます。 　私どもとしましては，地元の皆様から愛される風車を目指し，またご支援頂いた皆様への恩返しの意味もこめて，地元のJリーグ「鹿島アントラーズ」のロゴマークや地権者の企業ロゴを風車のナセルに描かせてもらいました。当社の風車が地元のシンボルとなってくれればうれしく思います。 　今こうして住友金属工業の鹿島製鉄所や北海浜工業団地の工場群にとけ込んだ風車を見ると，長年の取組みがようやく形になったという喜びと同時に心が引き締まる思いです。 　風力発電事業を取り巻く環境は決して楽観できるものではありませんが，当社は，母体が総合商社ということもあり，全世界に展開するネットワークも活かしながら，こうした風力発電事業をさらに国内外で展開していきたいと考えております。

今年6月から約3ヵ月に亘った風車の組立てが完了し，日本を離れる日が近づいてきました。試運転には立ち会えませんが，当社の風車が期待通りに稼動するものと確信しています。 　この現場では，風車が要求された性能が発揮できるよう，品質管理を徹底しました。一つ一つの確認作業が，完成後の風車の運転に影響し，メーカー保証とも関係してくるため，責任をもって取り組ませてもらいました。 　安全管理の面では，進め方が他国と違うのに驚きました。毎日，必ず朝礼を行い，作業員は皆その日にやるべき仕事を把握しており，これが指示するのにも非常に助かりました。全ての作業員の意思疎通が図れていることなど他では無かったことです。 　ヨーロッパでは風車組立ての専門業者が多数ありますが，風車産業自体が若いので作業員も殆どが若者です。今回，据付を担当した協力会社は風車組立ての専門業者ではありませんでした。しかし，作業員の工事経験が豊富で，一つの作業でもいろいろなやり方があるものだと感心しました。 　私はこれからまた別の国で風車の建設に携わります。日本での経験を次の現場でも活かせたらと思っています。

今年の7月頃から，次々と竹の子のように伸びてきたと思ったら，今度は向日葵のように咲いて，あっという間に10基の風車が出来ました。いまやクラブハウスや練習場から見える風車は，景色の一部となっています。 　私どもが運営する鹿島アントラーズの歴史は，1947年に創設された住友金属サッカー団に始まります。当初は大阪市を拠点にしていましたが，1975年にこの地に移転してきました。それからは，地域に根ざしたチームづくりを目指して活動を続け，いまでは地元をはじめ，大勢のサポーターを抱えるまでになりました。 　風力発電は，地球温暖化対策に重要な役割を担っているとのことですが，ここでの事業を地元の方々から理解していただく取組みを続けられ，風車群が街の人々から親しまれる存在となるよう願っています。 　選手たちの練習を見学に来るサポーターの中には，遠方からお越しの若者たちも多くいます。皆さんがこれらの風車に興味を持ち，環境問題を考えるきっかけとなれば嬉しいですね。

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