特集:羽田Report――D滑走路建設工事
D滑走路建設工事――100年耐用の滑走路づくり
最新技術の導入
 埋立と桟橋のハイブリッド構造は技術的に難しく,JV各社は高い技術力を投入して施工を進めている。当社がメインに担当している埋立/桟橋接続部は,超軟弱粘性土が厚く堆積した海域で,航空機の荷重を支持し,背面埋立部の圧密沈下に伴う地盤の側方移動を抑制しなければならない。設計供用期間100年間という基本条件をクリアするために,当社は,さまざまな最新技術を駆使して設計・施工を行っている。
埋立/桟橋接続部

技術 1 高剛性・高耐力継手「Super Junction」
 埋立地盤の側方移動による護岸の水平変位を抑制するため,鋼管矢板井筒護岸に当社と新日本製鐵が開発した高剛性・高耐力継手の「Super Junction」を採用した。継手は鋼管矢板基礎に用いる鋼管同士を連結させるもの。鋼管矢板井筒の隔壁部に「Super Junction」を採用し,山形鋼と鉄筋からなる継手部に高強度モルタルを充填させることで,従来の継手工法と比較し,せん断剛性を3.3倍,せん断耐力を6倍に向上させた。
鋼管矢板井筒護岸構造イメージ 山形鋼と鉄筋からなる継手部に高強度モルタルを充填した

技術 2 「円柱スリット式消波構造」の採用
 暴風時に高波が渡り桁・桟橋に影響を与えないための対策として,当社は接続部護岸に「円柱スリット式消波構造」を採用した。直径1.2mのプレキャストPC柱(スリット柱)を並べて設置することで,波が柱と柱の間を通過する際に波のエネルギーが減衰し,護岸からの反射波を低減することができる。さらに,平常時においても周辺水域の波浪が低減され,航行する船舶や周辺水域の生物の環境への影響も軽減できる。
当社技術研究所での水理実験状況。実験結果をもとに最適なスリット柱の形状と開口率を決定した 当社技術研究所での水理実験状況。実験結果をもとに最適なスリット柱の形状と開口率を決定した

技術3 地盤変形予測技術とIT施工
 接続部護岸背面の埋立部では最大8mの圧密沈下が発生すると予想され,護岸はこの沈下に伴う地盤の側方移動の影響を受ける構造物であるため,この移動量を高精度に予測することが設計上の課題であった。当社は遠心模型実験や弾粘塑性変形浸透流解析プログラム「LIMDAC」を用い,施工中から供用100年後までの側方移動量を評価し設計に反映させた。
 また,施工中の護岸の変形を監視するために鋼管矢板や鋼管杭に予め計測機器を設置し,計測結果を施工に反映するIT施工を行っている。
LIMDACによる施工段階の地盤変形評価 当社技術研究所で行った遠心模型実験による地盤変形状況

技術4 超高強度繊維補強コンクリート「サクセム」
 当社が開発した超高強度繊維補強コンクリート「サクセム®」のプレキャスト床版を桟橋部の一部に採用した。サクセムは特殊鋼繊維を混ぜ適切な養生温度を管理して固めることで,180N/mm2の圧縮強度と高い靭性を持つ。これにより,コンクリート床版に比べて重量が約50%低減され,桟橋部の鋼製ジャケットや鋼管杭の鋼重の削減に寄与する。
航空機荷重による載荷実験で安全性を確認 サクセム床版の製造実験

環境への配慮
 当JVが埋立と桟橋によるハイブリッド構造を採用したのも,多摩川の水の流れを阻害しないという環境上の条件をクリアするためだ。一方で,工事区域周辺における工事が及ぼす影響を的確に把握するとともに,国や地方自治体が制定する環境基準,条例に沿った環境維持に努めている。また,環境影響評価法に基づき環境アセスメントを実施。沿道大気質,騒音,振動,悪臭,水質,底質,動植物についてモニタリングを行っている。
騒音調査 モニタリングの様子
一致団結して竣工を目指す
東京土木支店羽田総合事務所淡島雅男 所長 厳しい工程の中,休みなく施工を行っています。工事は安全が第一。それぞれの立場で気付いたことはお互いどんどん提案し,作業に反映していくことが大切だと話しています。海上工事なので気象にも左右されます。例えば台風や暴風雨時には,大型作業船は湾内の基地港へ退避します。一度退避すると工事再開までに一週間近くかかり,工程への影響は大きい。しかし,安全を第一に考え,どのタイミングで退避するのか,東京航行安全情報センターはじめ関係各所と情報を共有しながら判断しています。
 現在は,機械の手配や,協力会社,JV所員の人員を確保することに苦労しています。ローテーションを組んで対応していますが,どうしても勤務状況が厳しくなってしまう。健康管理には気を遣います。これだけ注目されている大規模現場ですから,これからも一致団結して,誇りを持って仕事に取り組んでいきたいと思っています。

 D滑走路建設工事――100年耐用の滑走路づくり(1)
 D滑走路建設工事――100年耐用の滑走路づくり(2)

 D滑走路建設工事――100年耐用の滑走路づくり(3)
 国際線地区関連工事――2010年秋の供用開始を目指して