特集:想像から創造へ 鹿島社員の「初夢」メッセージ
座談会 夢の都市像を語る
鉄道を基幹にした“夢の都市像”とは——。
当社東京土木支店は教育改革推進委員会を設置して,若手土木技術者の教育を推進している。2005年度にスタートした「少人数タスク活動」は,拠点ごとに現場混成チームを編成し,様々なテーマを設定して,活発な討議を行っている。
その一つ,「鉄道土木の未来」をテーマとするタスクチームのワーキングにお邪魔して,夢の都市像を自由闊達に話し合ってもらった。
「特集トップページ」のイメージイラストは,アルモ設計の上野真理さんに描いていただいた“タスクチームの夢の実現”である。
東京土木支店 第一土木統括事務所
「鉄道土木の未来」タスクチーム
伊藤 卓 JR大塚駅
JV工事事務所・所長
伊藤 卓
田淵哲也 京成曳舟駅
JV工事事務所・工事課長
田淵哲也
小川雄二 上野毛JV工事事務所・工事課長
小川雄二
吉利 喜代幸 京王吉祥寺JV工事事務所・工事課長代理
吉利 喜代幸
山本信也 東急渋谷JV工事事務所・工事課長代理
山本信也
辻 保亘 JR大塚駅JV工事事務所・工事課長代理
辻 保亘
高野裕亮 JR稲城長沼駅JV工事事務所・工事課長代理
高野裕亮
梶山 仁 東急渋谷JV工事事務所
梶山 仁
有賀大峰 JR国立駅JV工事事務所
有賀大峰
山本 「こんな都市になったらいいね」「こんな街があったら楽しい」。今回は難しい技術や理論は抜き。こうした観点から明るい未来を描いてみよう。
伊藤 まず,朝の通勤ラッシュから開放されたいね。都心を住宅地にして,郊外へオフィスエリアを分散して配置するのはどうだろう。
都市のコンパクト化ですね。人口減少・高齢社会を踏まえると,都心に便利で快適な居住地を形成するのはいい。
山本 都心に居住者が集まるのなら,鉄道をすべて地下化して,地上を有効活用する・・・。
田淵 横の広がりから縦の広がりへ,コンパクトシティの形成は変化する。地下化した鉄道の沿線上に,地上100階建ての超々高層住宅を配置し,上空でビル同士をつなぐ。“動く歩道”といった人の横の流れを上空でつくってあげてもいいね。
吉利 天空の“動く歩道”と並行して,地上にも遊歩道が欲しいな。自然の空気を吸ってウォーキングやサイクリングしたい人もいるだろうし・・・。
山本 地下の鉄道は,上下2段構造の複々線化を提案します。そうすればラッシュ時に複々線をフルに使用してラクな通勤ができる。それ以外の時間帯は複線使用にすれば,使用しない2線で土木・保線などのメンテナンス工事も容易だし,余裕をもった運行が確保できる。
伊藤 土木屋の目から見た提案だね。利用者に迷惑をかけることもなくなるし,安全も確保できる。夜間作業がなくなるから働く人にもやさしい。我々にとっては助かるプランだ。
吉利 地下鉄道のリクライニングシートに座って,コーヒーを飲みながら新聞を読んで通勤する。僕の理想の通勤像だ。
田淵 だけど,未来の列車は超高速になっていて,コーヒーを飲む間もなく到着してしまうかもしれないよ。
吉利 それなら,各駅停車と通勤快速と2車線型にしましょう。僕はゆっくり通勤でゆく。駅に着いたらカバンからノートパソコン程度の超軽量折りたたみ自転車を取り出し,ワンタッチで組み立て,会社まで自転車通勤!
小川 低炭素社会の構築にも役立つしね。環境面での話もしましょうか。
梶山 都心は超々高層住宅と商業ビルのほかは,緑地帯にして“都会の森”をつくろう。
高野 いいね。緑地帯には景観に配慮して,樹木のかたちをしたソーラーシステムを設置する。その電力で昔懐かしいチンチン電車を都会の森の中に走らせるというのはどうだろう。地上に鉄道がなくなってしまうのも寂しいし,結構癒されるかも。
小川 ソーラーパネルの効率が非常によくなって,屋上の面積だけでビル全体の電気をまかなえる。電柱・電線といった配電設備がなくなり,都市の景観も美しくなるね。地下鉄道も,光ファイバーケーブルで屋外の太陽光を集光すれば走行可能だ。
吉利 列車が走行する際に発生する振動・音・風をエネルギーに換えることもできそうじゃない。
都市生活に必要な電力を,宇宙に設置した太陽光発電所からマイクロ波で地上に送電なんてことになったら凄い。
伊藤 構造物には光合成が出来る外壁を使用する。題して“外壁のミトコンドリア構想”。
高野 当社技術研究所のコンクリート技術に期待ですね。壁面は緑化して都会の森と構造物との調和も図りたい。
吉利 ビルの超々高層化に戻りますが,僕は究極の駅ビルが欲しい。超々高層駅ビルに住宅,商業施設,病院・役所・学校などの公共施設を集約したらとても便利になる。
伊藤 駅構内ビジネスとして農業をやるのもいい。ビルの中で農産物を生産して,穫れたての野菜を販売する。余った野菜は特殊冷凍でストックする。ビル内の家庭・飲食店などで排出される生ゴミをバイオ技術で肥料にして使えばいい。
小川 100階建てビルの壁面緑化は,雨水のろ過化装置に転用できそうだね。地下に高機能のろ過化装置を設置して,下水などの排水も再利用できるようにすれば,ビル自身で水資源の循環を行える。
有賀 地下鉄道に平行して,円柱状の輸送システムを構築する。物流を地下化することで,農業ビルで作った野菜を即地方へ出荷することもできますよ。
伊藤 超高速輸送により,出荷先でも穫れたて野菜が食べられるというわけだ。
有賀 郵便専用ラインも風圧を利用した無人化輸送にしたい。一家に一つ投入口があって,宛先情報入りの小型チップ内臓カプセルで自動配達するのです。
梶山 物流を地下化したら,益々クリーンな都市になるね。空気が澄み渡り都心から富士山が見えたらいいね。
有賀 大深度地下を活用して,生産施設や廃棄物処理施設,リサイクル施設などを移したら,さらにクリーンな都市になりますね。
伊藤 いろいろ出てきたね。夢物語のように思えるかもしれないけど,我々が提案した都市のかたちって,土木・建築・環境・エンジニアリングなど当社の技術を進化・発展させれば,実現可能なものばかりじゃないかな。
山本 そうですね。私たちも鉄道土木の現場での日々の仕事を,こうした「夢」を意識して取り組むことも大切ですね。
田淵 みんなで話し合った夢の実現に向けて,さあ2010年も頑張りましょう。
座談会 夢の都市像を語る
column 夢を魅せる
上野真理
アルモ設計(出向)プレゼンテーション部 マイスター 上野真理

 座談会「夢の都市像を語る」をイラスト化してくれた上野さんは,当社関係会社アルモ設計で建築パースを描き,プレゼンテーション支援を行っている。2002年,マンションインテリアのCGパースで米国のコンペに応募し,映画『ブレードランナー』のデザインで有名なシド・ミードから審査員賞を受賞。これを契機に活動範囲が広がった。
 「人が想像したものを絵にするのが仕事」と語る上野さん。彼女独特の手描きのタッチが社内外の設計者から好評で,上野ファンが尽きない。CGも使いこなすが,あくまで手描きにこだわるのが上野イズム。
 「みんなの夢を自分の中で翻訳して絵にする。コンペでテンションが上がっている設計者と,わずか1週間ですが同じテンションになって,その間一緒に夢を見させてもらっています」という。
 「施主,設計者,現場や周辺の人など,より多くの人が私のパースをみて,夢を膨らませ,実現につなげてくれるのが理想です」と意欲的な上野さん。今回の月報とのコラボレーションには,「夢のツギハギで絵を描いてみると,新しい発見がありますね。解決すべき問題も浮かび上がってくるのではないでしょうか。アイデアをいち早く可視化できる“絵”の役割を再認識しました。鹿島が描く夢の実現に向けて,私の絵が役立てばうれしいです」と話してくれた。

 座談会 夢の都市像を語る
 夢は実現する。Dreams come true.

 国内外からの社員の2010年「初夢」メッセージ