特集:開業! 副都心線と新しい東急電鉄・東京メトロ渋谷駅
Chapter02 地下鉄をつくる その1(駅間トンネル編)
今回開業した副都心線・池袋駅〜渋谷駅間の8.9km区間のトンネル工事のうち,当社JVが担当したのは,明治神宮前駅〜渋谷駅までの738.5m。建設発生土を減量し環境負荷を低減するために,東京メトロは複合円形の断面を考案した。それに対応すべく開発された新型のシールドマシンが,明治通りの地下20mを掘り進んだ。
【工事概要】
13号線神宮前工区土木工事
場所:東京都渋谷区神宮前6丁目〜渋谷1丁目/発注者:東京地下鉄/設計:東京地下鉄/規模:泥土圧式シールド工法 施工延長738.5m/トンネル外径横幅9.7m 高さ8.4m/工期:2004年3月〜2006年8月(東京土木支店JV施工)
不要な部分を掘らない工法
 副都心線の建設工事では,多くの環境負荷低減策が実施された。当社JVが担当した工区では,建設発生土を抑制するため,トンネル断面を上下に押しつぶしたような形(複合円形)の掘削断面が採用された。そこで,当社は「EX-MAC( Excavation Method of Adjustable Cutter )工法:イー・マック工法」を開発,複合円形断面を実現する新型シールドマシンを本工事に導入した。
 シールドの断面は正円形が一般的。正円形が力学的に最も安定しているからである。しかし断面が大きな地下鉄や道路などの交通インフラでは,トンネル上下の利用しない部分まで掘削するため,掘削量が多くなり,掘削後,不要な空間をコンクリートで充填しなければならなかった。
 EX-MAC工法では,従来までの伸縮カッター技術を応用。1つの回転軸に6本のカッタースポークを装備し,そのうちの4本に伸縮カッターを設置することで,円形では掘削できない左右の余掘り部分の掘削を可能とした。同工法により,正円形の掘削と比較して掘削断面が10%程度縮小するとともに,不要な空間を充填するコンクリートの量が約40%低減できた。
 工事は2005年6月に着手。明治神宮前駅でシールドマシンの組立てや,地上部防音ハウス設置などのシールド掘進準備工事が開始され,2005年11月からの初期掘進を経て,2006年2月から本格的に掘進を開始。シールドマシンは,緩やかな曲線を描きながら明治通り直下を掘進。約3ヵ月後の2006年4月に渋谷駅に到着した。

カッター収縮時カッター延伸時EX-MAC工法で使用されたシールドマシン。複合円形断面が特徴
地下のトンネル坑口付近で組み立てられるシールドマシン。投入から組立て完了までに3ヵ月を要した
分割され地下に搬入されるシールドマシン。作業は交通量の比較的少ない夜間に実施された稼動中のシールドマシン後方部
EX-MAC工法により完成した駅間トンネル。円を上から押しつぶしたような複合円形となった(写真提供:東京地下鉄)
column 東急東横線との相互直通運転化へ向けた取組み
事業イメージ図 副都心線と東急東横線は,2012年に相互直通運転を予定している。そのため,現在地上部分を通行している東急東横線渋谷駅〜代官山駅までの1.4km区間を,地下化する事業が進められている。その中で当社JVが担当するのは,渋谷駅側からのシールドトンネル工事(577m)。本工事では,渋谷川を横断し既存東急東横線の高架橋直下を掘進するため,できるだけ多くの土被りを確保する目的で,不要な空間の少ない矩形シールド工法が採用される。当社は,EX−MAC工法を更に進化させたシールド工法を開発し,本工事に適用する予定。新工法により掘削断面の更なる安定化が図られるとともに,建設発生土を減量化し,地球環境にやさしい工法を実現する見込みだ。
 工事は現在,シールドマシンを投入する立坑を掘削中(他社施工)。2008年10月頃にはシールドマシンの投入,組立てが開始される予定で,来年4月の掘削開始にむけ準備が進められている。
 当社はシールドトンネル工事のほかにも,既存東急東横線高架橋の基礎防護工事,地下埋設物の移設工事なども併せて手掛けている。
平面図
縦断面図
【工事概要】
(13号相直)東横線渋谷〜代官山間地下化工事(土木工事第1工区)
場所:東京都渋谷区渋谷3丁目〜東1丁目/発注者:東京急行電鉄 設計:東京急行電鉄/規模:泥土圧式シールド工法 施工延長577m トンネル外径横幅10.3m 高さ7.1m/工期:2005年1月〜2014年3月(東京土木支店JV施工)

 Chapter01 副都心線とは
 Chapter02 地下鉄をつくる その1(駅間トンネル編)
 Chapter03 地下鉄をつくる その2(駅舎編)