特集:建設副産物のリサイクル

循環型社会とこれからの建設業
日刊建設工業新聞社 取締役編集局長
佐藤 正則(さとう まさのり)氏に聞く

佐藤  正則建設副産物の現状と業界の対応をどう捉えておられますか。
●建設現場での建設副産物というとその処理は今までほとんど野放しになっていました。今回やっと再資源化のために法規制がかかるわけです。今までも自主的に取り組んでいる企業はありますが,現場においては高コストになりがちの感は否めないでしょう。従って,やっているやってないの企業間のバラツキや格差は相当あると思います。熱心に取り組んでいる企業はそれなりに評価されるべきですが,そこまで世の中のしくみなり考え方が至っていないと思います。特に世間一般 の建設業界への見方はどうしても低い方,悪い方へ集まってしまいがちです。やはり業界全体のレベルアップが必要になってきます。

建設工事資材再資源化法案が来年度以降からいよいよ動き出すわけですが,建設業界へ及ぼす影響をどうお考えですか。
●法律によってこれからは,発注者責任・元請責任も強化され,企業責任が大きく問われてきます。そうなると,現実には処理場がなくて,モノがつくれない・壊せない,という事態がおきる可能性があります。現状をみればどう考えても廃棄物発生量 と処理能力に大きな差がありますからね。有効なリサイクル技術が早々に実用化されなければ,急いで処理場や再資源化施設をつくらなければならない状況でしょう。これはゼネコンや解体業者だけでなく自治体も非常に関心を持っています。 処理コストを明確にすることも重要ではないでしょうか。つまり解体・分別・処理をして,再資源化工場へ運ぶというリサイクルの費用は工事請負代金に含めるのではなくて,全く別 枠で予算のつけ方,支払い方をすべきではないかなと思うのです。処理費用は建物原価の中に細かく見えてこないので,どこまでやるべきことか,また実際にやっているのか不明瞭になるからです。企業が責任を持って対応するためにも別 枠計上をルール化した方がいいと思います。経審の点数にもいれたらいいのではないかと思いますね。

ここ2,3年環境分野への関心は非常に高まっていると思われますが…。
●環境という言葉はやや使われ過ぎという感じもします。環境に関してはブームでやるようなものではありません。その基本は倫理観のようなものですから,本来規制やルールがあるから守らなければならないと考えるのではなく,環境を考えるのは当然だ,というレベルにまで高まって欲しいと思います。 4年ほど前,あるドイツのゼネコンの研究所に行ったときの話ですが,環境に対する考え方が全く違うのです。日本の場合は,環境のために何かをする,という意識がまだありますね。それからビジネスにつなげていきたいという考え方もします。それはそれで当然のことかもしれませんが,ドイツで感じたのは「いい環境技術は黙っていてもビジネスになる」という捉え方なのです。環境先進国ドイツでは,ここまで企業なり国民なりの考え方が出来上がっているのです。

日本でも環境配慮という観点から循環型社会の構築が叫ばれていますが…。
●循環型社会という意味には,資源を再利用し,繰り返し使っていくということもさることながら,企業も行政も国民一人一人が,同じ考え方,捉え方を循環させることが大切であると思っています。単に素材の循環だけでなくて考え方も循環しあえば,日本人の環境に対する考え方もかなり違ってきます。結果 として環境に取り組んでいない企業は,社会責任を果たしていないということで企業としての存在そのものが認められませんということにもなるでしょう。

21世紀の建設業の環境についてあるべき姿はどうだと考えられますか。
●建設業の生産行為は大地の上あるいは大地の中にモノをつくりだしていくものです。大地の法則に逆らってはものをつくれない。大地と密着している産業です。モノを建てるときは,この上に建てさせて下さいと,大地の神様にお伺いをたて,地鎮祭を行うわけです。こういった意味から大地と自然の法則に則って生産する,つまりもともと建設業は環境産業ではないかと思うのです。もっといえば,建設業の中に環境部門があるのではなく,大きな環境産業というものがまずあって,その中に建設を行う部門やリサイクルを考える部門,設計部門や不動産開発部門があるというのが,本来の姿かもしれませんね。 (聞き手:KAJIMA編集部)


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