特集:これからの道路インフラ

Chapter 2 道路の有効活用
人と車,道路の情報を最先端の通信技術を用いて連携させるITS
道路利用者の安全,円滑,環境の改善を目的とする交通システムである。
ETCやカーナビなど各種の情報機器を中心に普及が拡大しているが,道路整備の観点からもその活用方法が模索されている。
※ITS:Intelligent Transport Systems(高度道路交通システム)
光が誘導するレーンライティング
 当社が開発したレーンライティングシステムは,高輝度発光ダイオード(LED)を路面に埋め込み,ITを用いて弾力的に制御,発光点滅させ,車を誘導させるシステムである。日中の太陽光でもドライバーの視界に入るよう,非常に高い輝度のLEDを用いている。
 車線や矢印などの道路標示と組み合わせれば,道路を効率的に利用することができる。例えば,一般道では交通量の多い朝夕にバス専用レーンを表示させ,比較的少ない昼間は駐車スペースの表示に変更,既存の道路を効率的に利用することも可能。また混雑が上下線,時間帯によって異なる幹線道路の中央線を変更するリバーシブルレーンにも利用できる。
 安全性の向上を目的とした使い方もある。積雪や地吹雪により路面標示の視認性が悪くなる降雪地域では,数センチ程度の積雪なら,走行中の車内からも確認できる。
 その他,事故が多いトンネル内部の合流・分岐部で,LEDの点滅が合流車両を運転者に知らせ,車の走行速度を調整させる効果も期待されている。夜間,横断歩道を利用する際の注意喚起,駐車場での空きスペースへの誘導など,活用方法は多岐にわたっている。
レーンライティングの導入イメージ
道路標示での適用例 テスト道路に設置したLED
降雪地域での視認性実験(北海道・浜頓別) 実験用に設置したLED
駅前広場。乗用車を優先させた駐車スペースを標示 横断歩道への適用イメージ
地域活性化を導くスマートIC
 ETCは2007年1月末現在,平均利用率が約70%になるなど,急速に普及してきている。このETCを活用した高速道路のスマート・インターチェンジ(IC)がいま全国で展開されようとしている。
 従来のICは,上下線の料金所を一ヵ所に集約させる必要があった。高速道路本線からループ状に導入路をつくる「トランペット型IC」と呼ばれる形式である。これに対してスマートICでは,上下線各々にETC専用の簡易なICを設けるもので,ループ状の導入路が不要となり,「ダイヤモンド型IC」の形式がとれるようになった。
 国土交通省,都道府県や各高速道路会社では,共同で全国各地の高速道路のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)の一部にこのスマートICを導入する社会実験を行った。直接一般道に乗り降りできるようになった効果や運営上の課題などが検証され,十数ヵ所で恒久的に設置することも決まった。
 料金所の渋滞緩和に威力を発揮してきたETC。スマートICとして活用すれば,周辺地域の交通の利便性が高まるだけでなく,物流ターミナルや大規模な宅地開発などとの連携で地域の活性化にも貢献するのである。
トランペット型IC ダイヤモンド型IC
上信越自動車道・新井PA内に設置されたETC 上信越自動車道・新井PA内に設置されたETC
地域活性化を導くスマートIC
column 道路事業を検証するためのツール・・・・・・交通環境・評価システム「REST」
 当社では,インターチェンジ(IC)や駅前のターミナルなどを計画する際に,これらの施設が交通に与える影響を評価するシステムを開発している。
 「REST」(Realistic Evaluation System of Transportation)は,車や人の複雑な挙動を交通工学に基づいて解析し,その結果をアニメーションで表現させる交通シミュレーションである。周辺の交通環境に配慮した事業計画を立てることができる。
 解析結果を様々な方法で示すのも特徴の一つ。CADなどの図面上,地図上,航空写真上に動画で表示させるほか,鳥瞰やドライバー,歩行者からの目線による3次元アニメーションでも表示する。
 その他,交通による騒音や大気汚染などの影響を分析し,整備効果の妥当性を交通量と環境面の両方から評価する機能もある。
 この最新のシミュレーション技術は,国土技術開発賞をはじめ,多くの賞を受賞するなど,高い評価を得ている。
図面上での解析表示 3次元アニメーション(CG)での解析表示 CO(一酸化炭素)の拡散分布図

 Chapter 1 再開発と共同して行うジャンクション建設
 Chapter 2 道路の有効活用
 Chapter 3 道路の維持・管理