特集:これからの道路インフラ

Chapter 3 道路の維持・管理
わが国のトンネルや橋梁などの道路施設は,高度経済成長期につくられたものが多く,今後,老朽化した施設が大量に発生する。
こうした事態に備え,道路インフラを国民の貴重な資産として捉え,効率的,計画的に維持・管理するための「アセットマネジメント」の導入が始まっている。
橋梁の長寿命化を実現する青森ブリッジマネジメントシステムBMSマネジメントフロー
 2003年,青森県は橋梁の大量更新時代の到来に備え,橋梁アセットマネジメントを導入する方針を決定し,この中核となる「青森ブリッジマネジメントシステム(BMS)」構築に着手した。
 BMSは,橋梁の点検・調査結果に基づき,橋梁の構造,材料,自然環境条件,使用条件などによって異なる劣化現象を,橋梁工学・材料工学を駆使して予測し,LCC評価を行って,橋梁管理者のニーズにあった効率的・効果的な維持・管理計画を策定するコンピュータシステムである。各専門分野のエキスパートを集めたシステム開発コンソーシアムが結成され,2004年〜2005年の2年間で,日本で初めての実用化レベルのBMSが構築された。当社はシステム開発会社としてBMS構築を支援した。
 青森県ではBMSを用いて予算シミュレーションを行った結果,予防・保全技術などを取り入れた橋梁の長寿命化や,老朽化した橋梁の計画的な更新など,橋梁の特性にあったきめ細かい維持・管理計画を実行することによって,事後保全一辺倒であった従来の画一的な維持・管理計画に比べて,50年間で最大約1,200億円以上の維持・管理費が節約できることが明らかとなった。これに基づいて中長期予算計画が承認され,2006年度から5ヵ年計画が実行に移されている。
 国土交通省によると,国道・地方道には橋長15m以上の橋梁がおよそ15万橋あり,建設後50年を経過する橋梁は現時点では6%に過ぎないが,20年後には45%に達するという。アセットマネジメントの導入は,今後ますます活発化しそうだ。

※LCC(ライフサイクルコスト):供用期間中に要する維持・管理費用の総額
青森県の道路橋 モバイルPCで橋梁の各部位の点検結果を入力する
LCC算定 予算シミュレーション
中期事業計画(5ヵ年計画)
Column 道路施設の長寿命化に貢献する当社の技術
Technology 1 コンクリートの材料劣化を未然に防ぐ・・・・・・マジカルリペラー
 マジカルリペラーは,コンクリートへの水の浸入を防ぐ高性能吸水防止材。塩害・中性化による鉄筋腐食,凍害,アルカリ骨材反応などの発生・進行を防ぎ,コンクリート構造物の長寿命化を実現する。
 シランとシロキサンを主成分とするシリコーン系材料であり,有機溶剤を使用していないため中毒症の危険性もなく,環境にも優しい。一回の塗布で緻密な吸水防止層を形成することができる。
橋梁での施工例 橋梁での施工例
Technology 2 コンクリートのはつり深さを制御・・・・・・コリジョンジェット工法
 超高圧の水噴流で洗浄や切断などを行うウォータージェットは,産業用から医療用まで幅広く用いられている。
 当社が開発したコリジョンジェット工法は,二つの小径ノズルからウォータージェットを噴射し,コンクリートを“はつる(削る)”技術。二つのウォータージェットを衝突させると水流が拡散し,破壊エネルギーが減少する。この原理を応用して,はつりの深さを制御している。
 劣化したコンクリートをはつり除去し,コンクリートやモルタルで補修する“断面修復”に用いられる。その際,鉄筋の裏側に付着したコンクリートも,鉄筋を傷めることなく完全に除去することができる。
二つのノズルから噴射したウォータージェット 実証実験
水しぶきをあげながら削っていく 鉄筋がきれいにむき出しになった
Technology 3 補修後のひび割れ進展状況を観察できる・・・・・・NAV工法
※ Nylon Acrylics Visible
 トンネルの覆工コンクリートのはく落防止対策として普及している「あて板工法」は,パネルや繊維シートで覆うため,補修後のひび割れの進展状況を観察することができなかった。
 NAV工法では,補強材のナイロンクロスにアクリル樹脂系接着剤を塗り込み,透明性の高いFRP(繊維強化プラスチック)を覆工表面に形成する。これにより,補修後もひび割れの進行状況を確認することができるようになった。目視による点検作業を継続して行うことによって,トンネルの健全性を容易に判断できる。
施工前 施工5日後

 Chapter 1 再開発と共同して行うジャンクション建設
 Chapter 2 道路の有効活用
 Chapter 3 道路の維持・管理