特集:第二東名・名神高速道路の建設

トンネル
鈴鹿トンネル下り線
TBMの先行掘削による大断面トンネルの実現

●TBMで掘り進む第二東名神のトンネル
 第二東名・名神のトンネルは,片側3車線の断面で両サイドにゆったりとした路肩を設けている。このため,掘削断面積は現東名神の2車線トンネル(80m2)に比べ,約2.5倍の200m2が計画されている。
 この3車線の大断面,しかも扁平断面の山岳トンネルを安全かつ効率的に施工するために,鈴鹿トンネル下り線ではTBM(トンネル・ボーリング・マシン)による導坑先進工法で施工している。これはTBMがあらかじめ小さなトンネル(導坑)を掘り,その後NATM工法で切り拡げる工法である。これにより,拡幅工事で必要なトンネル全線に渡る地質・湧水データを得ることができ,安全にかつスムーズに拡幅工事が行え,工期短縮に大きく貢献する。
 当社では第二東名・名神の工事中区間の中で,鈴鹿トンネル下り線,栗東トンネルなど4つのトンネルすべてをこのTBMによる導坑先進工法で施工する計画となっている。

扁平断面の頂部にTBMによる導坑を掘る
掘削断面積200m2という扁平断面の頂部にTBMによる導坑を掘る

TBM
TBM
6つの170kwモーターで前面のカッタヘッドを回転させる(長さ13.2m,重さ約213t)


●鈴鹿トンネル下り線工事
 急峻な鈴鹿山脈の南端を三重県亀山市から滋賀県土山町に貫く鈴鹿トンネル。延長は約3.9km。現在施工中の第二名神の中で一番長いトンネルとなる。この鈴鹿トンネルでは直径5m・オープンタイプのTBMで先行掘削が行われている。現在はTBM導坑3,647mのうち,3,000m付近を掘削中だ。
 TBMは岩盤を掘削しながら進む機械で,カッタヘッドと呼ばれる回転破砕装置で切削する機構と掘削したズリを運び出す機構を持っている。1ストローク最長1,500mmを掘進し,地山の状況に応じてファイバーモルタルを吹き付けたり,鋼アーチ支保工などで支えていく。鈴鹿トンネル下り線では,当社の豊富な地下探査技術の中から,切羽前方の地質状況を予測する削孔検層システムと速度検層システムを導入している。これは油圧ドリルで岩盤を削孔する際に得られるデータを用いて,切羽前方の地質を予測するもので,安全にTBMを掘進させることができ,全線で採用している。

地質縦断図
地質縦断図
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●TBM月進日本記録を達成
 TBMの最先端・切羽では思ったよりも作業員が少ない。TBMのオペレーターが一人,吹き付け担当が三人,枕木を伸ばす作業員が三人等である。ズリはベルトコンベアーで坑口まで運ばれる。実際にTBMの上に立つと,ガリガリと岩盤を削る音と振動を体に直接感じる。このTBMは,500通もの応募の中から「導夢」という名前がつけられた。
 鈴鹿トンネル下り線は地山が比較的安定しており,難関と予想された断層も10m程度と予想より短くて済んだ。昨年11月には,TBMの月進769mの日本記録を達成した。
 TBMは昨年の9月に発進し,今年夏頃には到達する予定となっている。わずか1年足らずで3,600mにわたるTBM導坑が完成することとなる。その後三重県,滋賀県両側からNATM工法による切り拡げ工事が始まる。

TBM先端
TBM先端

径5mのTBM導坑(完成した部分)
径5mのTBM導坑(完成した部分)
坑口付近のベルトコンベア設備
坑口付近のベルトコンベア設備



第二名神高速道路 鈴鹿トンネル下り線工事
<工事概要>
場所 三重県亀山市安坂山町〜滋賀県甲賀郡土山町
発注者 日本道路公団 名古屋建設局
設計 ロードエンジニアリング
規模 トンネル延長3,938m(TBM導坑3,647m)TBM導坑断面積 20m2TBM先進導坑掘削工法
工期 1998年3月〜2001年3月
施工 名古屋支店JV施工




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