特集:500号記念


その2
これからの社内報
「KAJIMA」をどう
する
―編集者達の座談会
これまで「KAJIMA」は,担当した編集者達それぞれが,真摯に何を伝えていくべきなのかを考え,一号一号を重ねてきた。500号を迎えた今,鹿島を表現する一つの顔となっている。現在,そして501号からの顔を支えるメンバー登場。

横尾広報室長
横尾広報室長
座談会

栗田秀樹
栗田秀樹
谷山義孝
谷山義孝
岩瀬秀子
岩瀬秀子
石原紀子
石原紀子

横尾 今回は,記念すべき社内報“KAJIMA”の500号特集ということで,普段は編集子として本誌づくりに当たっている皆さんの日ごろの思いを熱っぽく語ってもらいたいという趣旨です。
 まず,毎月の発行に当って一番苦労するのは,どういう点でしょうか。

毎月,毎月決算していくような辛さ

岩瀬 なんと言っても時間的なことに,一番苦労しますね。月刊誌ですので,次に出る号を終えてからその次の号にとりかかるのでは間に合わないんです。次号,その次の号も並行して,考えなければならないというのが一番大変です。時間的な余裕をもっとつくらないといけないなと,毎月毎月反省しています。もっとじっくり考えて取り組みたいと思っているのですが。
谷山 本来のあるべき姿は,当月の編集作業をしながら,合い間に翌月の取材に行ったり,翌々月の企画を考えたり,さらにもっと先の年間のスケジュールを考えなければいけないということですね。企画と編集作業と,頭を切り替えながら同時に進めていくということです。ただ,企画を考えることと,原稿を作成することはまったく異なった作業だと思います。前者は,様々な手段を使って情報を収集し,そこから問題点や方向性を見出したりするものですし,後者はこれらの情報を一気に収束させていくものです。
横尾 いわば作業と企画,それを同時に一人でこなさなければいけない。先を見越してプランを立てなくちゃ,という気持ちはあってもどうしても目先の締切りに追われるジレンマですね。
石原 文章を書くときにはものすごいエネルギーが必要です。一日中ずっとパソコンをにらんでいても,本当に文章が浮かばなくて終わったりすることもあります。そういうときは,「私は,今日1日何をやっていたのだろう」と思ったりすることもありますね。書けないときは,すごく苦しいです。
栗田 今,KAJIMAの印刷総部数は4万2,000部なんですが,そのうち2万7,000部が得意先,社外に出ています。そうなるとやはりいい加減なものは出せないという編集者の思いもあって,どうしても目の前のものにこだわってしまう。粘ればいいものができるかもしれませんが,期限を考えるとここらであきらめるか,というジレンマを毎号感じているんです。毎月毎月,良くも悪くも決算せざるを得ないような状況です。
横尾 だから,いつも私は申し上げていますが,毎号毎号100点を取らなくてもいいじゃないか。毎月発行しているのだから80点でもいいと思いますね。ただ,何回かに1回位は95点,100点を取って欲しいという思いはありますね。
岩瀬 取材に伺ったりすると,現場の方は喜んでくださるんです。やはりKAJIMAに載るということは,大きなインパクトがあるんですね。ですから,私たちもできるだけいい写真を使って,許される範囲で社員の苦労話などを紹介し,人の汗を感じられるような誌面にしたいと思っています。特に,現場を紹介させていただくときなどはそんな思いが余計に強くなりますね。
谷山 それは私も取材していてよく感じることですね。当社の社員は,誰しもKAJIMAに対する特別な思いがあるようですね。普段は気軽に取材に応じて頂けても,KAJIMAの取材ということであれば構えてしまいます。そういう特別な思いがひしひしと伝わってきて,こちらも時間の許す限りどこまでも完璧な編集を目指してしまうのです。
横尾 そうですよね。客先が本社ビルを建てるというと,それは客先にとっては何十年に一度の大事業ですよね。私達は,そうした客先の“想い”に応えようと与えられた条件の下で,最上の物を作り上げて納めようと全力を尽くす。KAJIMAには,そういうマインドに相通じるものがありますね。共通する気質を感じるわけですよ。努力の結果を自分の筆で全力を尽くしてとことん書き表わしたいというこだわりは,ものすごく大事なことだと思います。大変だけれども,その分やりがいを感じますよね。
岩瀬 そうですね。やっていてうれしかったことは,海外勤務の方が,遠隔地の現場でもKAJIMAは届くとおっしゃるんです。「KAJIMAが届くと,本社は自分のことを忘れてないんだなと思う」と。KAJIMAが毎月届くことで自分は鹿島の社員なんだということを再確認できる。届く重み,ずっしりとした重みなんでしょうね。届くうれしさと届ける喜び。編集者としてもうれしいですね。

双方向の情報交換を期待

横尾 広報室の大きな役割の一つに会社のトップが考えていることや,会社の方向性について,タイムリーにわかりやすく伝えていくことがあると思いますが,そのための社内情報収集には,どんな工夫が?
岩瀬 編集会議メンバーの皆さんからのお話や新聞情報,イントラに載っている情報などあらゆる事柄に関して,常に「KAJIMAの素材にならないか」を考えています。難しいことですが,自分のアンテナを高感度に保ち,いろいろな方向へ向けるように心がけています。
谷山 なるべく多くの社員のみなさんと接する機会を設けるようにしています。例えば,忙しい中でも時間をつくって素材を探しに,土木や建築など各部署をまわっていろいろなお話を聞くようにしています。
横尾 要するに,KAJIMAは社員のコミュニケーションの担い手でもありますね。1万数千人の社員皆さん,相互の情報伝達や意見交換の媒体。これがこれからも最も大切な役割の一つとなっていくと思います。様々な職場環境があり,そこではいろいろな感性を持ち合わせる人々が働いておられるわけで,その意味からも社員の声をもっともっと吸い上げ,KAJIMAを通じてフィードバックすること,それらによって社員間相互の健全なコミュニケーションを醸成する役割を果たすことができる。そのためにも今まで以上に社員の皆さんにも登場していただきたいですよね。
栗田 双方向でやっていきたいですね。
横尾 そうそう,だから,“イントラ”を通してでも,“デジカジ”を介してでもKAJIMAを読んでの感想なり意見なりをどしどしお寄せいただければありがたいですよね。社員の皆さんの声が反映されれば,KAJIMAには一層厚みがつくと思いますから。

会社の方向性をわかりやすく


横尾 そのようにして集めた素材をうまく取捨選択することが大切だと思いますが,そのあたりはどうですか?
石原 基本的な考え方は二つあると思います。一つ目は当社の豊富な実績を紹介すること。それから二つ目は,これから当社がやっていこうとしている方向性を示すことです。特に社内に向けてこれらの会社の新しい動きを伝えるというのは,コンセプト的なもので編集は難しいのですが,それを掲載することはすごく大切なことだと思っています。
横尾 大きい会社になればなるほど,一社員にとっては会社が向いている方向が見えづらい場合もありますよね。特に現業部門などで勤務されている方々にとっては,KAJIMAから得る情報も大変貴重で,重要な情報源なんですね。
栗田 私は,本社に転勤になって一年になるのですが,会社はこういう方向で動いているんだということが改めて実感できました。現場では工程を進め,収益を上げるために頑張ることが毎日の業務の中心であって,会社はどういう方向に進んでいこうとしているのか,今,こういう業務の進め方をやっているけれども,これでいいのかなというような疑問を持つこともしばしばあると思うんです。そういう時に,会社の方向性をわかりやすく,自分たちの業務と少しでも結びつくことがKAJIMAに掲載されていれば,力になり得るのではないかなという気がしています。

電子媒体は見る,印刷物は読むという感覚

横尾 ところで,最近のIT化の流れの中で,社内報を印刷物から電子媒体に置き換えるという会社も増えてきました。KAJIMAはどうあるべきでしょうか。社内報でありながら社外への顔としての役割を併せ持つKAJIMAにとって,こういう電子化の波を,どのように考えていったらいいんでしょうか。
栗田 私は,イントラネットや,インターネットを見ていて,これはいいなというものは,プリントアウトして読んでいます。いいものはきちんと紙で残しておき,いつもそばに置いておきたいのです。その場ですぐ使う情報,それはプリントアウトしようとはあまり思わないですよね。でも,また何日かたって読むかもしれないなといったものはプリントアウトして手元に置いておく。電子メディアは見る,印刷物は読むという感覚でしょうか。
横尾 支店や現場の方々の話を聞くと,なるほどなと思うんですが,「職場では忙しくてパソコン画面からじっくり読み取る時間はなかなかないけれども,カバンに入れて出勤途上や帰宅途上で読むことができるんですよね」と話される方が多い。近い将来,モバイルで見ることも可能になるのでしょうが,やはり手軽さがポイントなんですね。それからもう一つは,家族ですよね。「今回おれの現場が載ったぜ」と,家族や親しい人にも見せられる。私はなるほどなと思いますが,こういう有用性ってありますよね。
 当社も社員一人ひとりにパソコンを配置し,遠隔地の現場でも本社と同じように即時に情報が得られる環境になっています。特に若い社員は既に業務に,情報収集に,駆使しています。これからハード面での進歩が加速されるのに伴って,ますます電子メディアの伝達スピードも上がる。そうなると世間で昨今言われている「活字離れ」ならぬ,「KAJIMA離れ」ということにならないのかな。
岩瀬 電子情報というのは,自分から積極的に求めないと情報にたどりつかないわけですよね。しかし,KAJIMAは社員であれば,机の上に毎月配布されるわけです。手元に配られたら,パラパラとは見ていただけるのかなと。そうすれば,目に止まる情報はあると思うんです。例えば,パラッとめくって期首会議の社長訓示が掲載されていれば,読んでもらえると思うんです。しかし,電子メディアは自分から能動的にアクションを起こさないと見ることができない,手に届かない状況になっています。社員の手元に直接届く印刷物は,社員が「知りたい情報」だけでなく,「知っておかなければならない情報」を伝えるという大切な役割を担っているんだと思います。
栗田 そうですね。電子メディアですと,極端な言い方をすれば,自分が好きな,知りたい見たい情報しか見なくなってしまうことが考えられます。だから,結果としてすごく情報が偏ってしまうと思いますね。それでいいのかなと。
谷山 私はデジタルの特性に着目して考えてみたいと思います。印刷物は発行までにある程度時間がかかりますから,同じメッセージを伝えるにしても,即時性が要求されるものは,これはもうイントラネットに軍配が上がりますね。その一方,印刷物はかたちとなって社員に届き,じっくり読んでいただける媒体だと思います。それぞれ棲み分けをしていく必要があるのかなと感じています。

社員の想いをかたちに


石原 私は,KAJIMAは単なる情報誌ではなく,社員の皆さんが,そして,編集者である私たちが伝えたいという「想い」を伝えることの出来る冊子だと思っています。自ら足を運び,取材した現場で受けた感動や驚き,当社の技術力の高さ,いろいろなところで頑張っている社員の姿,現場のみなさんがどんな気概でものづくりにあたっているかを,なんとか伝えたいと思いながらつくっています。そうした「想い」を持ってつくっていくことは,とても大切なのではないかと思っています。このような「想い」をかたちにしたものがKAJIMAなのです。
谷山 その一方,社員の想いを代弁するだけではなく,やはり会社として社員などに伝えるべきものはきちんと知らせなければならない。一般の雑誌だと営利目的でつくられるわけですよね。ですから読者に受けることを主眼にしなくては成り立ちません。我々の場合は商業ベースではありませんから,必ずしも読者を楽しませることにウェートを置かなくてもいいでしょう。
横尾 なるほど。社員の心意気を代弁する,会社のメッセージを伝える使命だと,そういう決意でこれからもやっていくということですよね。そうなるともう社内報寄りになりますが,お客様などに配布しているという社外への顔を併せ持っていることも考えると,伝える内容や方法についてかなり悩むところもありますね。

ステークホルダーズの中で 一番大切な社員へ向けて


岩瀬 そうですね。取材に行っても,よく「KAJIMAは営業用でしょう」と言われるんです。
栗田 そうですね。半分以上が社外に営業用として配布されていることもあり,もう鹿島を表現するひとつの顔になってますね。
谷山 そうなんですが,正式名称は社内報KAJIMAです。
石原 社内と社外の両方を意識することで,内容が中途半端にならないように編集することはかなり難しいですね。
岩瀬 社内報本来の「社員間のコミュニケーション」という役割を考えれば,もっと多くの社員の皆さんに登場していただき,もっと社員の顔が見える誌面したいですね。
谷山 今年度の新入社員への訓辞で,社長は「社員こそが欠くことのできない最大の資産である」とおっしゃっていました。そうだとするなら,私は社外報であっても,社外の方に対して,どういう人たちがつくっているかということを,もっとアピールしたほうがいいと思います。それには従来とは違う,効果的な伝え方や編集の切り口を考えなければなりませんが。
栗田 私は,このディスクロージャーの時代に社内か,社外かという物差しは合わなくなってきているのではないかと思っています。今や従業員,お客様,そして株主などのステークホルダーズに対して,何をどうやって伝えていくかということを考えていかなければならないと思います。従業員と経営者のベクトルを合わせることが,会社の力を最大にするのなら,まず,ステークホルダーズの中でも特に社員に,現在会社は何をし,今後何をしようとしているのかということをわかりやすく伝えることが非常に大切です。その情報を価値あるものにするためには,我々と社員の皆さんとの双方向のコミュニケーションが必要不可欠です。そして,我々はその説明責任の一端を担っているという自負を持って,この500号を機会にリ・スタートしたいと思っています。


編集メンバー
栗田秀樹:1985年入社 KAJIMA編集歴6か月 2000年3月関西営業本部より,広報室勤務。

谷山義孝:1993年入社 KAJIMA編集歴1年6か月 1996年4月東北支店より広報室勤務。

岩瀬秀子:1993年入社 KAJIMA編集歴2年9か月 社内CATV[KISS]を経て,現在に至る

石原紀子:1998年入社 KAJIMA編集歴3年1か月 入社から当編集を担当

司会:横尾広報室長




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