特集:フルキャストスタジアム宮城へ行こう

chapter 3  進化系“ボールパーク”の実現へ

“夢のある”計画案
 コンペで選ばれたフルスタ宮城の設計担当である建築設計本部・岡村耕治チーフは「目からウロコが落ちるような,思い切った提案をさせていただいた」と語る。
 じつは,提案までに与えられた時間はわずか1週間。「コンペ要項の説明を受けた翌日に現地を見て,案を考え,5日でプレゼンテーション資料をつくりこんだ」という。
 しかし「ボールパーク養成ギプス」「楽天山」「砂かぶり席」など,数々の楽しいネーミングからもわかるように,各所にアイデアあふれる新しい価値を盛り込んだ。
 「西武ドームや大リーグ球場の調査研究などで培ってきたスキルと,日ごろから“もっと違った野球場があってもいいのでは”と考えていたことが役に立った。観る人が野球をとにかく楽しめる空間,行くのが楽しくなる場所を提案した」と岡村チーフは振り返る。
 その結果,「鹿島案には夢があった」と非常に高い評価を受けて選考されたのだ。

進化するスタジアム
 50年以上も前につくられた一地方球場を,既存建物に負荷をかけずにボールパークへと変身させる大きな決め手である「ボールパーク養成ギプス」。構造が切り離されているために,段階的な整備が可能となった。このギプスをはじめとして,フェーズ1から来シーズンに予定されたフェーズ2へ,フルスタ宮城はまたさらにダイナミックに変貌する予定である。
 まさに“進化するスタジアム”――。そのフェーズ2計画案を紹介する。

ホスピタリティを高める
 フェーズ2では,おもにギプスが完成するほか,ブルペンの上に座席を増設。現状より5,000席観客席が増え,2万8,000席となる計画である。球場の機能が強化され,利便性が高まることで,より多くのファンが集う場となる。
 ギプスは3,4階が建て増され,BOX席や,VIP用ルームなど,ホスピタリティをより高めた席がつくられる。さらに,現状でホームベース後ろにある関係者席などをギプスに移動させ,空いた部分をさらに迫力あふれる観客席とする。
 ギプスの上にはバックネット裏から内野スタンドにかけて屋根が架けられ,球場は一変する。大リーグにも見劣りしないスケールのボールパークになる。
観る人が野球をとにかく楽しめる空間――フェーズ1ではまず第一歩を踏み出した
新しいボールパークへ
 もともと,球場は県営運動公園内という立地もあって,野球観戦以外でも多くの人が集う場所だ。そのため,球場内の様子が周囲へも伝わるようなアイデアや仕掛けが,フェーズ1,フェーズ2双方に盛り込まれている。
 フェーズ1でつくられた外野席後方の楽天山は,球場外とフェンスを隔てて公園とつながっており,球場内の雰囲気が公園にいる人へもよく伝わる。公式戦開催以外の日には外野席を開放できれば・・・・・・といったアイディアも検討されているという。
 また,観客席のヴァリエーションを増やすことで,熱狂的なファンから,子ども連れのピクニック気分で訪れる家族までが,いろいろな楽しみ方を見つけることができる。野球ファンならずとも一度は訪れてみたいスポットとなるに違いない。
 岡村チーフはさらに続けて「プロ野球は観客が“楽しんでなんぼ”のもの。既存の野球場より一歩も二歩も観客側に寄ったボールパークをめざした。実際に球場のあちこちで観戦してみると,楽天山で子ども達が楽しそうに遊んでいたり,それぞれの席で予想以上に迫力ある臨場感を味わえる。ゲームに興奮でき,一野球ファンとしても楽しかった」と嬉しそうに語った。
 フェーズ2ではよりぜいたくな席が現れ,3世代が楽しめる野球場になるとのことだ。「フルスタ宮城は,旧宮城球場の歴史を礎としながらも,観客がさらに楽しめる新空間をつくれたからこそ,ボールパークの新しいプロトタイプになりえるのではないか」――完全竣工を迎える来年3月,フルスタ宮城はどのような進化を遂げ,姿を現すのだろうか。
 進化系“ボールパーク”の実現へ  進化系“ボールパーク”の実現へ
フェーズ2ではボールパーク養成ギプスが完成し,“野球の楽しさ”を包み込むファサードができる
野球を「より自由に」「より近くで」「よりぜいたくに」見る。いろいろな視点から楽しめる楽しいボールパークをめざす
新しいボールパークへ――究極は野球の楽しみ方を進化させる器をつくりだすことだろう



chapter 0 プレーボール!
chapter 1 フェーズ1の“ゲームセット”まで
chapter 2 フルキャストスタジアム宮城“ラインナップ”発表
chapter 3 進化系“ボールパーク”の実現へ