翼を休める大きな翼

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■旅客ターミナルピル■

 関西国際空港を対岸の泉南市から見ると,銀色に輝く大屋根が美しい曲線を描く旅客ターミナルピルが,シェル構造でできた翼を,左右に大きく広げている。 同ビルは,国際設計競技で最優秀作品に選ばれたものである。設計はレンゾ・ピアノ・ピルディング・ワークショップを始めに, パリ空港公団, 日建設計, 日本空港コンサツタンツの4社国際JVという, 我が国初の市場開放プロジェクトで行われた。 設計者であるイタリアの建築家, レンゾ・ピアノは, エコロジカルな自然との共生をイメージしたが, シャープに輝くその外観は, 刃先が光を反射する日本刀のようにも見え, 内部は, 端へ移動するに従い緩やかに傾斜するプロポーションにあわせ,鉄骨がそれぞれ微妙に異なったカーブを描くため, 1本ずつ手作業でつくるという手間がかけられた。 日本の伝統工芸のような風貌と, 芸術的ともいえる緻密さを合わせ持ったターミナルピルは, その存在を世界にアピールしている。
               

■明るくポップな空港へ行こう■

地上4階建てのメインターミナルビル(MTB)は,1階が国際線到着専用ロビー,4階が国際線出発専用ロピーで,2階の国内線発者ロピーと,3階のコンセッション(商業施設)が挟まれるかたちとなる。 1階と4階にある車寄せや,2階の連絡ホームコンコースから建物に足を踏みいれると,発着ロビ一との間に,キャニオンと呼ばれる4層吹き抜けの空間が広がる。 地上26m,ガラス貼りの天井からは自然光が差し込み,ピル全体が屋外の様な明るさである。 自分が今何階にいるのか,目的地への乗り換えは何階に行けば良いのかが一目で分るように,車寄せや列車コンコースから伸びる各階の空中廊下やキャニオン内の壁は大きなガラスで仕切られ,エレベータもシースルーである。 また,MTBの両妻面は,エンドウォールと呼ばれる大ガラス面で,透明感と同時に,耐久性が求められたため,細い鋼材をトラス状に組む事でデザインを損なわない配度がなされいる。 キャニオン1階にある竹林の植栽を始め,至るところに植えられている10種類の樹木は,屋内でも育つ様にトレーニングされており,キャニオン内のポップな配色とともに,空港施設をより身近なものに感じさせる。

■美しく伸びるテフロンのエアダクト■

MTBの最上階,国際線出発卑用ロビーのあるフロアから,上を見上げると,スパン80mのアーチトラスに沿って,テフロンの幕が,照明を反射させながら何本も伸びている。 これは,オープンエアダクトと呼ばれ,地下の冷暖熱供給プラントからの空気を,最上階まで立ち上げたジェットノズルを使ってこれに吹き付け,全館に冷温風を循環させるという機能を果たすのもので特に熱供給量が多い場所は,小さいエアダクトで空調を強化している。 その横に,オープンエアダクトからの風を受けて,「フライング・モビ‐ル(果てしない空)」と題した,彫刻家,新宮晋氏製作のオブジェが,ゆったりと揺れながら,飛び立つ飛行機を見送っている。 また,MTB内には,3階の商業施設フロアを中心に,寿司,とんかつなどの和食をはじめとした飲食店27軒と,土産物屋が入り,一日に約20万人という利用者を見込んでいる。 安全面では,内部の鉄骨索材に,熱を受けると膨張・発泡して防火素材に変わる耐火塗科を使用したり,防災計画のゾーニング化を図り,各階に排煙設備やスプリンクラーを配し,80m放水可能な自動放水銃も設備した。空港島独自の消防団も設置され,防災設備は万全といえる。

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建築工事概要
●場所:大阪府泉南郡田尻町泉州空港中.泉佐野市泉州空港北

●発注者:関西国際空港(KIAC)

●設計:関西国際空港旅客ターミナルピル実施設計製作共同体 レンゾピアノBWJ,AER0P0RTS DE PARIS、日建設計、日本空港コンサルタンツ

●規模:ターミナルピル本館一鉄骨造一鉄筋コンクり一卜造 地下1階、地上4階 延べ100,000 ウィング一鉄骨造、地上3階 延ぺ100,000、事務棟一(北棟)鉄骨造 地下1階、地上5階 延ぺ19,800、(南棟)鉄骨造 地下1階.地上6階 延ぺ20,400

●工期:1991年4月〜1994年6月 (大阪支店JV施工)


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