ABWR建設への取り組み

 新潟県の日本海に面して位置する東京電力柏崎刈羽原子力発電所。 7基の原子炉が完成する1997年には、合計出力約820万KWの世界最大の原子力発電所となる。 当社は1、2、3号機の建設に携わり、現在1996年の完成に向け6号機の建設工事を進めている。
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ABWRの特徴

 東京電力柏崎刈羽原子力発電所6号機には、世界初のABWRが採用されている。電気出力も約135万KWと従来機の沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)より23%規模が大きくなったにもかかわらず、インターナルポンプの採用により原子炉まわりの配管系統が単純化された結果、圧力容器を低い位置に設置することが可能となり、耐震性を高めるなど従来機のBWRに較べ、経済性と安全性の向上が図られている。

RCCV(鉄筋コンクリート製原子炉格納容器)の建設

 ABWRでは従来の鋼製格納容器に代わって円筒型の鉄筋コンクリート製格納容器、RCCV(Reinforced Concrete Containment Vessel)が開発された。この鉄筋コンクリート構造の格納容器の採用により、鋼製では難しかった原子炉建屋と格納容器の一体化が可能となり、建屋のコンパクト化と低重心化が図られた。格納容器には、漏えい防止・耐圧・遮へい・耐震の4つの重要機能がある。RCCVは円筒形の内側に厚さ6.4mmのスチールライナ、その周りに内側・外側それぞれ3段の極太鉄筋を配した、厚さ2mの鉄筋コンクリート壁という構造になっており、これらの要求機能を満たしている。
 このRCCVの開発にあたり、事前に1/6の大型全体模型による耐圧実験と耐震実験を行い、圧力、地震力に対するRCCVの安全性を確認した。また、実施工に先行して実物と同じ大きさの部分モデルを現場の中に製作し、鉄筋の加工・組立て、コンクリートの充填性等を確認した。
 当社は、このRCCV及び建屋の施工において様々な合理化工法を採用している。




 RCCVの施工には、上下方向に7m、水平方向に2.3m足場が移動できる自動昇降足場や、コンクリートの充填状況をリアルタイムに確認できるコンクリート充填検知システムおよびトップスラブの鉄筋プレハブ工法などを採用している。さらに鋼板パネルブロック(SC間仕切り壁)やタービン架台の型枠鉄筋などを大型クレーンで吊り込む大型ブロック工法を採用している。

作業効率を高める全天候型建設工法

 柏崎市や刈羽村の冬期は季節風が強く降雪量も多いことから、1号機の建設において稼働率が低下した。そこで当社は天候に左右されない「全天候型建設工法」を2号機の原子炉建屋建設工事で初めて採用し、引き続き3号機、6号機の工事で改良、発展させてきた。
 この工法の特徴は、躯体工事に先行して鉄骨架構を組立て、建屋全体を覆うことで風や雪などの影響を受けることなく計画的に作業を進めることができることである。また、建屋内に資材搬送組立て用の2連式モノレールホイストやウォールクレーン等の搬送設備をとりいれ、生産性の向上を図っている。
 6号機では、新たに搬送設備として天井走行クレーンを採用し、RCCV及び周辺工事における資材の搬送や組立て等、大空間での複雑な作業に機動力を発揮している。
 また、中央部の屋根は大型機器を搬入する際に開放することができる4分割のテンション膜屋根になっており、その膜屋根は周辺部の屋根上に仮置きすることができる。
 この全天候型建設工法はRCCV建設を進める上で工期の短縮、作業環境の改善、品質向上に大きく貢献している。




写真は鹿島月報より転載

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