原子力発電所建設を支える鹿島の技術
原子力発電所の安全性は、一般の構造物に較べてはるかに高度なものが要求される。 そのため、敷地や周辺を対象に、事前に地質・地層についての様々な地盤調査、地震に関する調査・解析を実施する。 そこで得られた調査・分析結果を基にして耐震性の高い施設の設計が行われる。
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調査技術
ジオトモグラフィによる地盤調査技術
地盤調査は、原子炉施設の設置場所の選定や設計・施工に関わる地盤データを得るために行われる重要な調査である。このジオトモグラフィ技術は、地盤の特性を広範囲かつ高精度に調査するために、医学分野で利用されているX線スキャナ技術に代表されるトモグラフィ手法を地盤調査に活用している。
この技術により地盤の断層、破砕帯の位置や方向、亀裂や含水状態、地質構造などを評価することができる。
地震動評価
原子力発電所の設計では、敷地周辺で過去に起きた地震や活断層を考慮して、起こりうる最大級の地震動を想定し、安全性を評価している。
当社の地震動評価には、地震学の知見に基づいて、断層モデルから理論的に地震動波形を求める方法や、敷地内で観測された中小地震の記録を基に、大地震の波形を合成する方法、また、多くの地震データ(マグニチュードと震源)から統計的に応答スペクトルを評価するものなど多面的な方法があり、高い評価精度を確保している。この技術は原子炉建屋の耐震設計や解析などに生かされている。
MIKシステム振動計測車
原子炉建屋が建設された後に、設計どおりの耐震性能を保有しているかどうかを、振動実験により確認する場合がある。この振動計測車には、振動計や測定解析機器を搭載しており、相互相関技術を用いた高精度のデータ解析が可能で、その結果をリアルタイムに確認することができる。
耐震設計・解析技術
強塑性域考慮の地震応答解析システム
原子力発電所は、十分な耐震余裕度をもって設計されている。この耐震余裕度の評価をより確実なものとするために、原子炉建屋に加わる力が設計地震力を大きく越えた時の、建屋の状況を解析することが必要である。このシステムは、これまでの多くの実績に基づく試験データを総合的に活用し、建屋の強塑性域(構造物の破壊に近い極限状態)における挙動を精度良く解析することができる。
応力解析・配筋設計支援システム
原子力発電所の設計では、安全性の面から想定される様々な荷重状態に対し、正確に建屋各部の応力を把握し、部材を設計しなければならない。特にABWRで採用されたRCCVでは、構造が複雑でかつ解析するケースが非常に多く、このため、有限要素法(構造物を小さな要素の集まりとして表わし、コンピュータを使用して解析する手法)による応力評価や3次元CADを用いて複雑な配筋形状を検討し、最適な設計を行っている。
衝撃解析システム
当社は、高速で移動する物体が鉄筋コンクリートの建物に衝突した場合の、耐衝撃設計法を確立するため、10年以上にわたって様々な実験及び解析研究を実施してきた。
このシステムでは、衝撃荷重を考慮する構造物に対して、衝撃力によって生じる建物の挙動をシミュレーションし、実験では視覚的にとらえにくい構造物の挙動を、コンピュータグラフィックスで見ることが可能になっている。
この解析により、衝突物体の形状やスピード、建物の条件が変わっても衝撃現象を精度よく解析することができる。
新しい技術
SC構造システム
鋼板(S)とコンクリート(C)の合成効果を生かした新しい構造システムで、特徴として、コンクリートと鋼板の相乗効果により優れた耐震性を示す構造であり、鋼板が鉄筋・型枠の役割を果たすことで、鉄筋・型枠工事の省力化が可能となる。また、鋼板ブロックが工場生産できることから、工期短縮につながるなど経済効果も高いシステムである。
写真は鹿島月報より転載
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