水曜会:社内講演会の記録
第70回 2005年12月7日(水)
岩下 暢男鹿島 建築設計本部
フアラライリゾート
Alohaの語源は親密な気(持ち)の交歓といった意味。それは人だけでなく、神や空、大地や海、そしてそれらがつくり出す刹那の風景も対象にするのだろう。
ホテルやレジデンス、ゴルフコースなどからなるハワイ島西岸の最上級のリゾートとして名声を得ているフアラライで、6年間に亘り増築計画を指揮した岩下氏の報告会である。
冒頭のスライド。大きな空と溶岩だらけの茫漠とした大地。この間に立って何をどう創るのか途方に暮れた瞬間が出発点となった。しかし、この「空(から)」からスタートしてハワイ島随一のリゾート地に変貌させていくプロセスは極めて緻密。「すべての場所から海が見えること」を根幹に、道路のカーブ、幅などの一寸足りとも疎かに計画しない。大量の図面ですべてを検証する。ただの溶岩にさえ風情を与える。「パラダイス」という言葉とは裏腹に「創る」ことに求められる冷徹さと不断の努力。その上、ハワイの神々を疎かにせず、ローカルコミュニティにも気を配る。氏とともに写る関係者のスナップは青空のような笑顔。
6年間の格闘の末、天と地の間に創り出したものは単にペンタミリオネアー(500万ドルは自由に使える億万長者とのこと)のリゾートライフを満足させるだけでなく、関わるすべての人にアロハ・スピリットを満たす空間であったようだ。『パラダイスを創る』とは同時に『創ることのパラダイス』。まさに、楽園。

岩下 暢男
- 1960年
- 生まれ
- 1986年
- 鹿島建設