水曜会:社内講演会の記録
第89回 2018年2月7日(水)
杉本 博司新素材研究所
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自らの幼少期の生い立ちから始まった、杉本氏の講演。写真家としての氏が、建築家との接点の中から遅くして設計を始め、江之浦測候所を完成させた話は、なにか私たち若手が建築に熱中するような、新鮮さと無邪気さを感じた。
それは素材を選んでから図面を描き始めるという、氏の設計アプローチにも垣間見える。このアプローチは、かつて数寄者や大工棟梁が建材をあらかじめストックしておき、それらありきで設計・施工を行っていた順序を真っ当とし、「旧素材こそ新素材である」という氏の設立した新素材研究所の理念を色濃く表していた。
また氏が活動の拠点をニューヨークに据えていることから、日本にいる者にはない独特な日本文化の捉まえ方、時間感覚を感じた。建築をその文化が持つ長い時間の延長として考え、作り出している氏の建築は、私たちの日々の業務の中で感じる事の少ない、もっと長い時間での建築の持つ社会的な責任を感じさせた。
最後に氏のパートナーである榊田氏は、「商売的感覚」という言葉で、杉本氏の人となりを話した。もともと実家が商家であったこと、本人も骨董商をやっていたことが、今の建築のクライアントとの関わりに表出しているという。私は杉本氏のその人柄が、多くに共感される作品につながっていると感じた。

杉本 博司
- 1948年
- 東京生まれ
- 1974年
~ - ニューヨークを拠点に
活動中 - 2009年
- 高松宮記念世界文化賞
- 2010年
- 紫綬褒章
- 2013年
- フランス芸術文化勲章
オフィシエ - 2017年
- 文化功労者