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設計担当者のコメント

新藤両国本社ビル

建築設計の立場から

米田 浩二

創業来の拠点両国新社屋に、分散していた生産・営業・管理部門を集約し、業務の効率化と顧客サービスの向上が目指された。上層の「管理厚生ゾーン」、低層の「物流印刷ゾーン」、3層吹き抜けのアトリウム「コミュニケ―ション・アクシス」が各ゾーンを有機的に繋ぐ。再開発の都市軸に沿って設定された、各部署間の主動線となるこの「アクシス」は、両国駅に向かって突出したガラスの階段室により㈱新藤の「元気印」を発信している。
また再開発エリア緑道際の露地風の「ギャラリー」では、印刷の歴史・文化・最先端技術の展示が常時行われ、道行く人々が自由に見学出来るよう計画されている。
外装はコンクリート打放、メタルサイディング、そして石の構成。石の緑は、震災慰霊塔・国技館・公会堂の緑青屋根との調和を意識したものである。また下町風情の残る西側の街並みには、町屋の連子窓を想起させるトラックゲートの縦格子戸、上部には近隣プライバシー・西日制御を考慮してのバルコニー縦格子ルーバーを設えた。人の気配と視線が繊細に交錯し、時の移ろいと共に光と影が微妙に変化する・・・・「陰翳礼讃」現代の建築手法による伝統空間の創出を試みた。
柔らかな表情の杉板型枠コンクリート打放は、杉板のコンクリートへの転写(=印刷)をイメージしたもので、型枠杉板は壁材としても再利用されている。また廃棄予定であった写植プレートや松杭を、サインやアートワークに再生利用している。色彩計画においても、相撲・浮世絵・歌舞伎などに遺る日本の伝統色から、「茄子紺」「海老茶」をセレクトするなど、江戸文化の継承が目指された。これらは、企業主新藤久子社長の「両国」「印刷」そして「建築」に対する熱い想いに発するものである。

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