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設計担当者のコメント

広陵高校メディアセンター

環境としての建築

山本 幸彦

建築を考える上で環境に配慮することは当然とも言え、そこからすぐに地球環境へと話が進むと理解した気になるが、実際の設計を進める上では感覚的にピンとこないところもある。もちろん、地球環境が大切であることは言うまでもないが、まずは建物の建つ土地そのもの、周辺、地域、そしてそれらの条件下にある建物の空間から環境を考えていきたい。 その視点に立つとこのメディアセンターの敷地は魅力的である。背景となる雄大な自然緑地、斜面を造成した階段状のキャンパス、既存校舎群と緑地斜面に挟まれたアプローチの空間、半島状に突出し山裾へと視線の抜ける敷地端部。一方、下方のグランド側から望むと、法面の緑が背後の山々と重なり大きな緑地に包まれた敷地として見えてくる突端部。
記念事業という性格から、この半島の突端に大きくそびえるモニュメンタルな建築も可能だったかもしれない。しかし、今回既存の緑溢れる景観イメージを踏襲することとし、建物の強い存在感を与えず、自然と一体となった風景となることを心がけた。
南東側の法面に向かって伸びる庇は、この景観イメージを作りだすことに寄与すると共に、夏の強い日差しを遮り、眩しさを取り除き、熱負荷を軽減することで、室内環境を快適なものにしている。また、室内に続く庇の上面と上方のコンクリートスラブ打放しの面との間で外光の反射を繰り返させ、拡散された自然光による奥行きの感じられる室内を実現している。この庇はテラス部分を広く覆い、眺望の開けた半屋外空間となり、心地良い読書スペースを創りだしている。テラス側のサッシュ足元、法面の緑の間から風が室内へと入り、天井高の高低差を利用した温度差換気により、建物内部をスムーズに通り抜ける。
こうした内外の関わりにより、日常の中で、日差しの変化や草の匂い、緩やかな空気の動きを感じながら静かに本と向き合う、そんな時間を楽しむ環境となっている。

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