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設計担当者のコメント

キヤノン矢向事業所

構造設計の立場から

黒川 泰嗣

2003年のI期工事の設計から始まり、2006年のII期工事の完成まで3年、大規模施設の割には短い期間であった。設計当初は、生産施設という特殊な空間とアトリウムという巨大な空間をどのように組み立てるかが構造の命題であり、様々な意匠検討と並行して構造架構の検討を重ね、最終的には現在の架構システムとなった。 構造の特徴は、次の3点である。ペアカラムと25.2mの長スパン梁で構成するフレキシビリティに富んだ構造架構、ペアカラムをより強固なものにするブレースダンパーを用いた制震構造、高さ32mの巨大アトリウム空間を形成する鉄骨マリオンである。
施工段階では、アトリウム鉄骨の建て方、工期短縮のためのプレキャスト化などの検討を施工サイドとともに進め、設計施工の特徴を活かした施工が行われた。内容の濃い効率的な作業を短い設計期間の中で行いながら、さらに技術的な飛躍を達成できたことに大変高い評価をいただいたこということで、私個人にとっても思いが深い作品であった。

設備設計の立場から

小笹 雄史

設備計画の開始に当たり、(1)周辺環境との調和、(2)フレキシブルで快適なワークスペース提供、(3)CO2発生量の抑制を主旨とし、建築と設備が一体となって計画を進めた。その中でも設備設計上は(2)を主体とした。
大空間をつくり、使い勝手に応じて細分化する計画とした建築計画に対して、設備計画は使用開始直前まで種々の仕様変更が予想されたので、標準仕様(空調、照明、電源、実験ユーティリティ)を設定し、それでは対応できない要求については個別に変更対応する手法をとった。その場合、標準仕様が高すぎると過剰投資となり、低すぎると変更対応の時間とコストが増大するリスクが高まる。関係者間で綿密な協議を行い最適な標準仕様を設定するようにつとめた。
また、インフラの供給について、メインダクト・配管を実験室の内に入れず、外部のメカニカルシャフトに納め、将来の変更時に他の研究活動への障害を最小限にできる計画とした。
今後の設計でも、初めは一見無駄と思える計画、システム、スペースでも、何年後かにお客様に喜んでいただける設計を心がけたい。

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