特集:教育新時代の学校

キャンパスのグランドデザイン
魅力ある学園の構築を目指し,各地でキャンパスの再整備が行われている。
当社は,施設の建設だけでなく,学校の要望を汲み取ったマスタープランを立案。
キャンパスのグランドデザインを描くことから学園づくりに参加している。
当社が手掛けた「明星大学 日野キャンパス」のグランドデザインを紹介する。
化粧庇とアースカラーで統一された校舎群
テーマは「学生の居場所をつくる」
 明星大学 日野キャンパスのグランドデザインは,「学生の居場所をつくる」がテーマのひとつだった。
 机上のパソコンであらゆる情報が得られる現代社会では,学生がキャンパスに足を運ぶ意義は,主にフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションにある。大学のキャンパスが,単に講義を行うだけの器ではなく,学生にとっていつまでも記憶に残る居場所,たまにはよそ見をしたくなるような“心地よい空間”であってほしい――。こうした設計者の思いが,〈丘の上のキャンパス〉〈連続した賑わいのあるキャンパス〉〈ファサードの調和と多様性〉という3つの設計コンセプトに繋がった。
多摩丘陵の緑豊かな自然との調和
コンセプト1. 丘の上のキャンパス
 明星大学 日野キャンパスは,多摩都市モノレールの開通で通学動線が変化し,キャンパスの正面が逆転した。そのため,モノレール駅舎側から見ても存在感のあるキャンパスを構成することが課題となった。
 多摩丘陵の豊かな自然の中に広がるキャンパスは,“丘の上のキャンパス”と呼ぶに相応しい風景が創り出せる。この恵まれた立地を生かしたデザインを試みた。

コンセプト2. 連続した賑わいのあるキャンパス
 キャンパス全体の配置は,西側を文系ゾーン,東側を理工系ゾーンとし,各ゾーンには核となるオープンスペースを設け,学生が集える空間をつくった。各々のオープンスペースは全体回遊動線によって結ばれ,双方の学部の交流も生まれる設計になっている。
 また,建物は化粧庇を用いたフラットなトップデザインとし,スカイラインの統一感と丘の傾斜に呼応した全体の連続性をつくりだした。

コンセプト3. ファサードの調和と多様性
 建物は,既存校舎の外装にあるアースカラーで統一し,調和のとれたキャンパスを形成。各建物には開口部の表現や外装素材に変化をもたせることで,個性を尊重した表情豊かなキャンパスとしている。
小高い丘の上に広がるキャンパス “学生の集う場”となる文系ゾーンのオープンスペース
2007年2月に完成した理工学部A棟。特徴ある窓の庇により,ブラインドを降ろすことなくパノラマビューが望める。キャンパスの恵まれた環境を感じとれるようにとの,設計者の思いがかたちとなった 理工学部A棟 1階ガラス張りのエントランスホールと談話室。開放感あるデッキが広がり,“学生の集う場”を屋外に創出
理工学部B棟 4層吹抜けの外光が降り注ぐアトリウム。吹抜けに面しラウンジを設け,“学生の集う場”を屋内に創出
明星大学 日野キャンパス(東京都日野市)
発注者:明星学苑/グランドデザイン:当社建築設計本部/計画概要:既存校舎(一部撤去)を残し,3期にわけて校舎を新築/1期工事:新講義棟(設計:当社 施工:他社)/2期工事:理工学部A・B棟(当社設計・施工)/3期工事:共用演習棟,教育研究棟,図書・ITセンター,学生食堂
(基本設計:当社 実施設計・施工:他社)/2007年2月全体竣工
column 対話して進める学校づくり・・・・・・奈良学園中学校・高等学校
 当社社員による「スクールプロジェクト」の説明会奈良県大和郡山市にある奈良学園中学校・高等学校では,生徒・教職員参加型の校舎建替え計画「スクールプロジェクト」が進行中だ。当社の基本設計で校舎の建替えを進めるにあたり,学校側からの要望を受けてスタートした。“こんな校舎で学びたい”という生徒や教職員の想いを,存分に計画に取り込んでいこうという試みだ。
 生徒にプロジェクトへの参加を呼びかけたところ,60名を超えるメンバーがエントリー。参加者は数名のグループに分かれ,2007年秋の文化祭に行われるアイディア・コンペを目指し,ユニークなアイディアを創出中だ。当社は同学園のOB社員(京都営業所)を中心に,関西支店建築設計部や開発事業本部の社員がプロジェクトに参加。生徒の知的好奇心を誘発しようと,セミナーや建設現場の見学会なども企画している。
 生徒・教職員参加型の「スク−ルプロジェクト」が,「校舎の建替え」を「創造教育の場」に変貌させている。生徒の熱い想いがどんな校舎を創りだすのか。注目のプロジェクトである。

 キャンパスのグランドデザイン
 安全な学校をつくる技術
 安心な学校をつくる技術
 安定した学校をつくる技術