特集:都市づくりと緑力

Chapter0 都市と緑の関係 

熱くなる都市
 大都市の暑さは,年を増すごとに不快になっている。もはや日常生活を営む限界を超えるといった感覚にある。アスファルトやコンクリートで覆われた地面からの輻射熱,自動車の排気ガス,エアコンなどの電気機器からの排熱・・・・・・。都市化の進むなかで,こうした都市排熱が冷まされることなく滞った結果,都心部の気温が郊外に比べ異常に高くなる,いわゆる「ヒートアイランド現象」がこの猛暑の原因といわれている。
 その緩和対策として,排熱自体を少なくする省エネ対策のほか,緑による熱の蒸散作用に着目した緑化が大きな効果を期待できるものと注目されている。とくに都心部においては,その緑化対策として,街路樹や建物緑化に関心が集まっている。国や自治体レベルでの対応,それを受けた企業や研究機関による緑化技術の開発など,「緑力」に大きな注目が集まっているのである。
身近な緑の減少
 かつての日本には「鎮守の森」や「里山」のような空間があった。そこは,人が緑と接し安らぐ空間であり,生き物との共生空間として生態系の要にもなってきた。いわば身近な緑の単位である。
 人々が便利な都市生活を追求していくうちに,いつしかこうした空間は減少し,身近に緑を感じることが少なくなった。しかし,人と緑との関わり,生物との共存を考えていく上で,都市空間の緑こそ,多様な価値観に対応できる必須の要素となることは間違いない。
column 目で見る東京の温暖化
 東京都心部は,100年間で約2℃の気温上昇が起きている――。そんな実態を示したのが,当社が開発した広域環境予測シミュレーションデータである。100年前の地図をGIS(地理情報システム)に入力して,都市の緑被状況の変化から大気状態の変動を予測し,現在と100年前の8月の東京の風環境と温熱環境を再現したものだ。
 これより,現在の都心部には35℃以上の気温になる島状の地域が,東京湾岸から放射状に広がっていることが分かる。まさに,「ヒートアイランド」という言葉どおりの姿が現れている。
ヒートアイランド



Chapter0 都市と緑の関係
Chapter1 緑の持つ力
Chapter2 緑をつくる・評価する・まもる力
Chapter3 都市づくりに生かす「緑力」