特集:都市づくりと緑力

Chapter3 都市づくりに生かす「緑力」
“森の復活”をテーマに「フォレステージ高幡鹿島台」
 東京都日野市,多摩丘陵の一部に位置し,武蔵野の自然環境をそのまま残したかのような住宅地が「フォレステージ高幡鹿島台」だ。当社が開発を手掛け,建築家・宮脇檀氏が住宅と道を一体にした基本設計を行った。ここでは“森の復活”をテーマに,緑の連続する美しい街並みをつくりだしている。 
 そこは,メイン道路が緩やかなカーブを描き,歩いていくにつれ風景が移り変わっていく。豊かな植栽や樹木に目を奪われていると,いつの間にか住宅にたどり着く,そんな心地よい街並みなのだ。

緑がつくりだす街並み
 フォレステージでは,緑が街並みをつくっているといっても過言ではない。住宅は「デザイン・ガイドライン」が定められており,街並み全体が美しくコントロールされているが,住宅と道路との境界に高い塀を築くのではなく,すべての道路に植栽帯が巡らされている。
 そこではまるで庭の中の緑が,道路にまで染み出してきたかのようであり,四季折々に多彩な表情をつくり出している。
 また,住民が気軽に集える場として,7,8戸で囲む共用の「コモン広場」が7カ所設けられている。そこには,家の屋根を越える高さの大木・コモンツリーが植えられている。7つのコモンツリーはそれぞれ樹種が異なっており,それぞれの住宅地を印象づける空間となっている。
街並みのコンセプト
街並みのコンセプト 街並みのコンセプト
街並みのコンセプト 街並みのコンセプト
街並みのコンセプト
街並みのコンセプト
住民参加と緑力
 フォレステージの住民は,自らの庭を整え,街並みを美しくしているだけではなく,管理組合を設立し,コモンツリーとメイン道路上の植栽以外にも道路上の植栽の管理を行っている。
 実は,その植栽を含めた道路は,日野市役所と協議を重ね,道路として市に移管されたものである。しかし,たとえ市の管理部分であっても,「自分たちの緑である」という意識を住民が持てるようなつくりになっていることが大きい。つまり緑は,「公」と「私」の融合する中間領域をつくる役割も果たしているのである。
 
これからの都市づくりと「緑力」
 フォレステージにおいては,「緑力」が生物との理想的な共生環境を生み出し,人の心を豊かにする街並みをつくりだす効果を見出すことができる。
 これまで見てきた,環境的,生態学的,心理的といった多様な効果を有効に活用し,人や生物の触れ合う都市づくりに生かす――それがまさに「緑力」の魅力だ。これからの都市づくりに,「緑力」は欠かすことのできない要素になるだろう。
住宅から見る外の様子 メイン道路
各コモン広場に植えられているコモンツリー



Chapter0 都市と緑の関係
Chapter1 緑の持つ力
Chapter2 緑をつくる・評価する・まもる力
Chapter3 都市づくりに生かす「緑力」