特集:都市づくりと緑力

Chapter2 緑をつくる・評価する・まもる力
ビオトープで環境共生「ガーデンプラザ新検見川」
 「ガーデンプラザ新検見川」(千葉市花見川区)では,ビオトープをはじめとする環境共生が街づくりのテーマとなっている。
 「ビオトープ(biotope)」とはドイツ語の「bio(生き物)」+「tope(場所)」から派生した造語で,さまざまな生物が共に生息できるようにつくられた空間である。自然が急速に減少した市街地でも,人々が自然と触れ合える安らぎの場を生み,自然の仕組みや大切さを学ぶ環境教育の場として利用できることなどから,人と生物が共生できる緑化手法として注目されている。
 ガーデンプラザ新検見川では,子どもが遊べる「じゃぶじゃぶ池」といった水辺空間をはじめ,雑木林,トンボの池,バッタの丘,小鳥の森など,昆虫や野鳥が集まるための豊かなビオトープ空間が創造されている。
 また,自然界の物質循環を利用することで,メンテナンスを簡単にしており,住民自らが管理を行っている。この街のビオトープのあり方や,つくる手法は,今後に活かされていくテーマとなっていくだろう。
ビオトープにある深さ30cmの「トンボの池」 トンボの池にはメダカやムツゴが放流され,アサザなどの水生植物も生息している
column 現場用マニュアルが小学校の副読本にも!
「現場でできる簡単ビオトープ」の効果
 当社では,生物学的見地からもビオトープの研究を行い,さまざまな技術や実績を残してきた。その施工事例や関連技術,動植物の情報などを小冊子にまとめたものが,「現場でできる簡単ビオトープ」だ。
 このパンフレットは,社員が現場事務所の周辺でビオトープをつくる「ノウハウ集」という意味合いが強かったが,ある小学校の授業の副読本として採用されることとなった。蝶の舞う花畑やトンボが集まる池,鳥を呼ぶ仕掛けなど,ビオトープをつくる際のヒントが,イラストでわかりやすく解説されており,好評を博している。
A4判で10ページの「現場でできる簡単ビオトープ」
緑地の環境機能評価システム「m-EASE」
 これまでの緑化事例では,機能性や意匠性が重視され,計画の効果を客観的に評価することは難しいとされてきた。そこで当社が新たに開発したのが,計画・設計段階から緑地の環境機能を定量的に評価することができるシステム「m-EASE(エムイーズ Microscale-Environmental Assessment System on Ecology)」である。
 これは,緑地が持つ6種類の環境機能「CO2固定機能」「大気浄化機能」「気象緩和機能」「生物多様性維持機能」「景観向上機能」「防災機能」について,植栽を計画するCAD画面上で定量的に評価を行うことができる。また,システム内に樹木の生長モデルを格納しているので,緑地情報を入力することで,現状の緑地の変化や計画緑地についての予測評価をすることも出来る。
 「m-EASE」を用いれば,近年増加している住民参加型の開発で,身近な環境に及ぼす効果と影響を住民に提示できる。また,企業の環境会計・環境報告書に対応させ,環境配慮に対する姿勢をPRするツールとしての活用も期待されている。
 環境に対する意識の高まりに対して,「緑」の価値を総合的に判断することの出来るシステムといえる。
m-EASEのシステム
column 環境配慮型ポーラスコンクリート
 これまで河川や水路などの水辺は,治水や利水の観点から開発されてきたが,近年になって,動植物の生息環境としての重要性が認識されるようになった。このような気運が高まるなか,当社が住友大阪セメント,ケミカルグラウトと共同で開発している「環境配慮型ポーラスコンクリート」が注目されている。ポーラスコンクリートとは,連続した空隙を持つ特殊コンクリートで,護岸としての強度を保ちながらも,動植物の生息を可能とするものである。
 「環境配慮型ポーラスコンクリート」は,特殊な混和材を配合することによって,従来は困難であった大型骨材(20〜40mm)を粗骨材として利用しており,これによりコンクリート空隙への自然土壌の充填が容易となる。よって低コストで植物・水生生物・土壌生物が豊富な水辺環境を形成することができる。
 施工にあたっては,新たに開発された傾斜地用コンパクターなどを採用し,効率と品質の向上を図っている。そのほか,応用技術としてコンクリート廃材の現場内リサイクルによるポーラスコンクリート製造技術や,圧縮強度が18N/mm2を超える高強度ポーラスコンクリートの開発にも取り組んでいる。
 緑や生態系をまもるこのような技術開発には大きな期待が寄せられている。
空隙の大きさが特徴 一般的なポーラスコンクリート ミミズも生息している(!)
二次製品「ビオプランツ」の開発 コンクリート廃材を用いたポーラスコンクリートの開発
実験水路での施工後,植生が形成されている(右)。独立行政法人農業工学研究所との官民連携開発 法面での機械化施工(傾斜地用コンパクター)



Chapter0 都市と緑の関係
Chapter1 緑の持つ力
Chapter2 緑をつくる・評価する・まもる力
Chapter3 都市づくりに生かす「緑力」