特集:都市づくりと緑力

Chapter1 緑の持つ力

多種多彩な力を持つ緑
 では,緑の持つ力にはどんなものがあるだろうか。それは,生物の多様性を維持することに始まり,植物の光合成の作用によって,大気を浄化したり,CO2を固定するなどの機能があるほか,人間にとっては景観を向上させる機能がある。そのほかにも図のように,都市の中で緑は多くの役割を果たしていることが分かる。
 例えば気象を緩和する機能のうち,気温上昇を抑制する効果はどのくらいだろうか。真夏のプールサイドを想像しても分かるように,コンクリート表面温度は実に60〜70℃にも達している。それに対して,土壌面を緑化した表面温度は30℃程度になるという。
 このように環境に作用する力から,生態系を維持する力,さらには人々の心理面に作用する力まで,緑は多彩な力を持っているのだ。
緑の持つ力
身近に緑が生まれる「品川エコ・ヒーリングガーデン」
 昨年9月,東京都品川区総合庁舎の屋上に,区民が誰でも利用できる庭園が完成した。5つのエリアに分けられた施設は,「キッチン(家庭菜園)」や「ヒーリング(癒し)」,「セダム」,「ビオトープ」,「エコテクノ」といった様々な緑化技術を紹介しているほか,屋上緑化の効果をPRする展示施設の役割も果たしている。
 庭園に置かれたノートブックには,オープン以来,たくさんの「市民の声」が寄せられている。その一部を紹介しよう。
「ヒーリングガーデン」の様子  屋上菜園
市民の声
column 場所や条件を問わない緑化技術
 技術の向上は,さまざまな場所や条件での緑化を可能とした。たとえば徳島県板野町「あすたむらんど徳島」では,人工軽量土壌を板状に成型した緑化パネル「グリーンスクェア」を用いて,傾斜のある屋根に屋上緑化を施している。
 一般に芝生は,気象条件や使用状況の影響を受けやすく,その管理が難しくなる場合がある。通年で安定した芝の状態が求められる「埼玉スタジアム2002」では、土壌温度コントロールシステムにより,四季を通じて最適な管理が行われている。
 また,手入れが行われず荒廃するケースの多い都市近郊の雑木林を保全・再生するために,多様な草花の導入と低コスト維持管理手法の試験を行っているのが、千葉市の緑化試験場だ。さまざまなストレスに強い緑化技術の検討が行われている。
 多様な技術に支えられ、「緑力」は快適で安全な空間をつくり出しているのである。
あすたむらんど徳島  埼玉スタジアム2002
荒廃雑木林再生技術・鹿島緑化試験場  



Chapter0 都市と緑の関係
Chapter1 緑の持つ力
Chapter2 緑をつくる・評価する・まもる力
Chapter3 都市づくりに生かす「緑力」