特集:水といきる−水のある豊かな暮らし−
Chapter5 水辺で動植物と共生する〜ビオトープ化の働きかけ
通常のコンクリートを用いた水路 川や湖沼などの水辺に生物が生息する環境は私たちの生活に潤いをもたらす。当社では,河川,ため池など身近な水辺を多自然化するための研究開発を進め,これらのビオトープ化の働きかけを行っている。
 多くの河川や水路は,耐久性や安全管理上の必要性から,水中から護岸部までがコンクリート構造で,傾斜も急であることが多い。こうした条件において多自然化に効果的なのが,当社が開発した「環境配慮型ポーラスコンクリート」である。このコンクリートは,必要な強度を保ちつつ従来のポーラスコンクリートよりも大きな骨材を使用しているため,様々な動植物が生息できる大きな空隙をつくることができる。当社では,環境配慮型ポーラスコンクリートを用いた動植物と共生できる潤いのある多自然型護岸づくりの提案を積極的に行っている。

※ビオトープ(=Biotop)
語源は,ギリシャ語の生物を意味するBioと場所を意味するTop。生物群集の生息空間を表す。
環境配慮型ポーラスコンクリートの環境保全機能の概念図 通常のポーラスコンクリートを用いた水路
環境配慮型ポーラスコンクリートを用いた水路
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「都市型水害予測解析システム」〜雨水流出・排出現象を総合的に解析する
 近年,ヒートアイランド現象などの影響により短時間に局所的な集中豪雨が降る回数が増える一方,大都市へ人口はますます集中し,地下空間の利用拡大が進行しているため,都市部の水害への対応能力の向上が強く望まれている。
 都市型水害の8〜9割は,河川や水路や下水道があふれておこる浸水(内水氾濫)。しかし,従来の治水,水害対策では河川と下水道を別個に解析していた。これに対し,当社が開発した本システムでは,地表面雨水流出,下水管路網内の管路流,河川の水の動きを同時に考慮し,雨水流出・排出現象を総合的に解析できるのが特徴である。
 本システムを用いることにより,都市型水害を事前にシミュレーションすることが可能になり,浸水被害を評価したり,各種の治水対策や施設整備効果の確認,災害時の避難解析などに適用することができる。
 本システムは,当社が京都大学防災研究所の指導の下,中部大学との共同研究で開発した。
貯留施設計画評価検討例(浸水深分布図)

 Chapter 1 飲み水、農業用水を貯える
 Chapter 2 上水をつくる
 Chapter 3 水の力で電気をつくる
 Chapter 4 ビルの中で活躍する水
 Chapter 5 水辺で動植物と共生する
 Chapter 6 水をきれいにして戻す