構造物の安全を守る

見だしに
もどる
今号の目次に
もどる
他の号を
みる




 構造物の安全性を確認するためには、様々な解析や実験が必要である。 コンピュータを使った解析だけでなく、振動台や実験装置を使っての各種実験や、 実際に施工している現場へ出向いての計測、それらのデータやそれぞれの専門分野の知識と実績を元に未来の建設技術を作り上げていく。

震災特別研究7テーマ

 先の兵庫県南部地震では、いち早く調査報告書をまとめ、関連各方面に配布した実績が記憶に新しい。 今回の地震で得られたデータとこれまでに培ってきた地震工学、耐震、免震、制震関連の高度な保有技術を活用して次の7つのテーマの震災特別研究を行った。 また、そのうちいくつかのテーマでは、各方面の関係者を招いての公開実験を行い、高い評価を得ている。


兵庫県南部地震の地震動特性の解明

震源のモデル化、地盤増幅特性を解明して、各種解析の基礎データとなる阪神地区の地盤種別と地震動強さの分布図を作成。 地震動の観点から耐震設計や地震防災の向上をめざす。

都市型震災の社会工学的分析

地震被害と建物や地域特性の相関性、防災拠点への影響評価などによる、より安全で機能的な都市防災計画の提案。

既存RC橋脚の耐震補強工法

壁式橋脚に中間帯鉄筋を配置する方法や、PC鋼より線を巻き付ける方法で橋脚の耐荷力や変形性能を向上して大地震に備える。

既存橋梁に適した免震化工法

すべり支承と高減衰復元デバイス(水平力ダンパー)を併用して、橋桁の変位が少なく、施工も容易な免震化工法を開発。

軽量PCa部材による耐震補強工法の開発

RC構造物のリニューアルを兼ね、施工の容易な軽量PCa部材による耐震補強工法を開発。

経済的な液状化対策工法の開発

筋かいの固化体を組み合わせ、地震への抵抗力を効率的に高め、部分固化で全体固化と同等の効果が得られる工法を開発。

建物の緊急時水供給システムの開発

緊急時の医療施設の最低機能を維持するため、蓄熱槽の水利用を含め水供給システムを開発。


 このような研究や実験は、地震ばかりでなく施工中の構造物の安全性を高めるためにも行われている。 鹿児島県で施工中の伊唐島大橋は、5径間連続PC斜張橋で、センタースパンのスパン長は260m。 コンクリート橋のスパンとしては日本最長である。
 斜張橋の工事はやじろべえのように、主塔を中心に主桁を両サイドに張り出して進められる。 完成して橋がつながった時点で構造物として安定するようになっているため、伸びるほどに風の影響で主桁の上下動が激しくなる。 そこで、技術研究所では現場で風応答観測を行い、それらのデータから導いた予測を元に、アクティブ型仮設制振装置を開発した。 この装置によって、施工中の風揺れによる船酔い状態を解消することができ、作業効率と安全性の向上を図ることができる。 また施工中の構造物の安定性を確保することができる。 今後ますます長大化する斜張橋建設において、この装置の果たす役割は大きい。





写真は鹿島月報より転載

All rights reserved, Copyright(c)1995 KAJIMA CORPORATION