大都市の鉄道工事を見る

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 人口集中が続く大都市圏。 通勤・通学のための鉄道輸送需要は、 年々増大を続けている。 そして朝夕のラッシュを少しでも緩和するため、 各地で線路増設工事や駅改良工事が行われている。 今月は大都市圏における鉄道工事にスポットを当て、 困難な条件で施工を進める 各現場の状況を紹介しよう。

各所で進む鉄道の改良

 「大量・定時・高速・安全」と 四拍子揃った特徴を持つ交通機関・鉄道は、 高いエネルギー効率も相俟って、 通勤通学の足として、 また都市間の移動手段として 重要な役割を果たしている。 東京、 大阪などの大都市圏の交通手段は、 鉄道なしに考えることはできない。 しかし各地の通勤ラッシュは、 過密ダイヤによるノロノロ運転、 スシ詰めの車内、 人がこぼれ落ちそうなプラットホームなど、 様々な問題をもたらしている。
 一列車当たりの車両数の増大、 車両の高性能化などの車両側の改善、 信号システムの改良とともに、 線路の増設や駅の改良といった 線路や設備の改善も精力的に押し進められている。 同時に高架化、 地下化を行い、 市街地の分断、 自動車交通の阻害を解消する努力も続けられている。

時間的・空間的制約の中で

 これらの工事は、 当然のことながら既設の営業線に近接した狭隘なスペースの中で、 列車の運行を続けながら行われる。 そこでは列車の運行に対する ほんのわずかの支障も許されない。 このため作業は、 大きな時間的、 空間的な制約の中で行われている。
 例えば線路上での重機作業や、 線路の切替などの大がかりな作業は深夜、 最終列車の発車後から始発列車までの き電停止中のわずかの時間に行わなくてはならない。 その時間は線路によってことなるが おおむね2〜3時間程度である。 また空間的にも、 工事用車両が乗入れられる通路が、 「狭い」のはまだましな方で、 「無い」場合さえある。 あるいは線路を大規模に仮受けし、 その直下で作業を行うケースもある。 また営業線の直下に 大規模な構造物を構築するケースもある。
 このような制約の中で 作業のひとつひとつは、 気の遠くなるようなステップを踏んで行われる。 通常の現場だったら一日で何本も打てる杭を、 3日かけて1本打つのが、 これらの現場である。 また昼間は昼間で、 短い間隔で次々と行き交う 通過する列車の安全を確保しながら行う作業は 別の神経をすり減らす。 鉄道工事の担当者は、 地震も大きな時間的制約の中で、 大きな責任の中に身を置き、 日夜工事の無事完成に向かって努力しているのである。
 もちろんわれわれ以上の大きな責任が 鉄道事業者に貸せられている事を 忘れてはいけない。 鉄道輸送という、 言わば都市の動脈を担う仕事の重要性は いくら強調してもしきれるものではない。 これら事業者、 施工者一体となった努力が、 毎日の安全な輸送を確保しながら、 鉄道輸送サービスの改善を 一歩一歩果しているのである。


写真は鹿島月報より転載

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