特集:景観デザインと土木の「バランス」![]() |
土木の景観デザインへの気運が大きく高まり,その設計手法の構築が本格化している。土木構造物に求められる役割は,ダムであれば治水や発電,道路や橋梁であれば安全で円滑な交通,といった“公共の機能”を果たすことである。また,効率的な整備のために経済性や施工性も要求される。土木構造物はこうした“基本性能”を満たすことが大前提となる。 戦後の高度経済成長期,国家レベルの生産性向上が急務とされていたため,早急な社会基盤整備が求められ,基本性能を重視した土木構造物が建設されていった。さらに,環境意識の向上,生活のゆとりや豊かさといった新たなニーズが時代の流れとともに生まれ,“景観”も重要な性能のひとつとして土木構造物に求められるようになったのである。 今月の特集は,当社の土木構造物における景観デザインへの取組みを紹介する。「環境の時代」といわれる現在,「基本性能のバランス」や「風景のなかのバランス」を重視する土木のデザインの可能性を探ってみたい。 Design Works in Civil Engineering 一見すると“デザインされていること”に気づかないことも多い土木の景観デザイン――たとえば山間部の道路周辺に出現する法面(のりめん)は,できるだけ自然にみえることが理想であるからだ。ひとつの風景のなかには,このスケッチのように,周囲に溶け込んだり,ランドマークとなったり,基本性能を充足したうえで景観にも配慮した数々のデザインが存在する。 景観デザインの目的は,土木構造物の造形的な美しさを求めるだけでなく,人々の生活をかたちづくる一部として土木をとらえ,自然環境と融和し,長く愛される豊かな風景を創造することにある。 ここに描いた風景は多様な土木のデザインの一例である。当社では,機能性・経済性・施工性のバランスを確保しながら,「シンボル性」と「調和性」をキーワードとして風景のなかでバランスよく存在するデザインワークをめざしている。 |
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