特集:病院レボリューション

時代のニーズに柔軟に対応できる病院建設

巻頭インタビューで神戸赤十字病院の小川恭一院長は,阪神・淡路大震災の経験から,病院は地震時にも医療機能を維持できる,壊れない建物であることの重要性を強調した。
一方,病院の施設整備はこうした非常時のほかにも,高齢社会の進展,医療提供体制の機能分化,医療技術の急速な進歩・・・といったニーズへの対応も迫られている。
しかしこれにどう取り組むかは,各々の病院が持つ環境,特徴,経済力等によっても異なる。
新しい時代の医療を取り巻く変化に即した病院建設の事例を紹介する。
Case 3よみうりランド花ハウスの場合アメニティの向上を目指して――
 団塊の世代が高齢化を迎える2015年頃には,高齢者施設の需要が大幅に増加し,施設に求められるアメニティの質も高くなると予想される。一方で事業者サイドも経営的な面から,例えば病院が高齢者施設を併設した施設へ転換する等,様々なケースが見込まれる。
 当社はそうしたニーズを先取りして,多様なサービスを行う体制を整えている。アメニティの質を高めるその一例として「よみうりランド花ハウス」を紹介しよう。

 「よみうりランド花ハウス」(川崎市多摩区)は,全室個室,ユニットケアによるサービス提供を行う特別養護老人ホームである。読売新聞社を母体に福祉事業を展開する「読売光と愛の事業団」が,地域サービス機能充実の一環として,高齢社会の深化に対応したモデル施設を建設した。
 この施設では,利用者にできるだけ従来の生活スタイルを継続できる環境の提供をコンセプトとした。施設ではない“終の住みか”として満足できる個人の空間,仲間との交流を図るコミュニティの空間を提供し,施設の生活に生き甲斐を感じてもらいたいという願いからだ。
 当社は施工を担当したほか,高齢者施設の運営・コンサルティングを行う当社のグループ会社「ヒューマンライフサービス」が,利用者のアメニティの向上に資する備品コンサルタント業務(仕様提案,入札管理,品質・納品管理)を行った。高齢者に優しい安全性・機能性を備えた備品の選択と,安らぎを創出する空間づくりを目指す様々な工夫を施した。
工事概要よみうりランド花ハウス
よみうりランド花ハウス
場所:川崎市多摩区
発注者:読売光と愛の事業団
設計:三菱地所設計
規模:RC造 5F 延べ8,902m2
工期:2003年9月〜2004年11月
(横浜支店JV施工)
「よみうりランド花ハウス」のこだわり

●1階 デイサービスの工夫
通所利用者の食事,入浴,リハビリ,レクリエーション等を行うデイサービススペース。可動式家具と備品でゾーン分けを行い,利用者が自由に居場所を選択できるよう配慮した。例えば,浴室前には籐の家具を配した湯上りコーナーを設置したり,可動・組合せ式の畳を使用し,休憩と談話の両方に利用できるコーナーをつくった。このほか懐かしさや木の温もりのあるソファーコーナーやモダンな家具のあるコーナー,パソコンコーナーなどがある。
デイサービススペース
●2階〜5階 特別養護老人ホーム・個室の工夫
全室個室,専用トイレ,洗面台つき。玄関をイメージした照明や表札,長押を設け,天井や照明に変化をもたせ,“家”らしさを演出したつくりとなっている。利用者の使い馴れた家具が持ち込めるよう,最低限の収納家具と椅子,ベッドを設置した。入居者の心理面に配慮して,トイレのドアとカーテンを併設した個室もある。
個室
●2階〜5階 特別養護老人ホーム・食堂リビングの工夫
入居者は各階40名。10名を1グループとして生活支援していく。食堂リビングはグループごとに設置。各々の家具のデザイン,張り地,木の材や塗装色も変えてグループとしての特色を持たせた。ソファーや椅子は美しくかつ衛生管理のしやすい張り地を使用し,高齢者の身体機能と色覚を配慮した。テーブルの高さは4段階に変えられ,様々な活動のためにレイアウトの自由度の高いデザインとなっている。
食堂リビング
●浴室の工夫
各階に,身体能力・安全性・嗜好に配慮した浴室を設置した。人的介助のみでは入浴が難しい方でも,出来るだけ機械的ではない入浴を楽しんでもらうために,檜の浴槽とストレッチャーを組み合わせた浴室もある。
浴室 撮影:4点とも三輪晃久写真研究所
ヒューマンライフサービス
 当社は1987年に,医療・福祉施設の建設や運営に際し,利用者と事業者双方の立場に立って問題解決を行う専門企業として「ヒューマンライフサービス」を設立した。91年に名古屋市東区に有料老人ホーム「モーニングパーク主税町」を建設して自ら運営。高齢者の生活のニーズを把握し,それに基づいた高齢者施設の運営および備品コンサルティング,販売事業を行っている。
ヒューマンライフサービス



interview 新しい病院のかたち
時代のニーズに柔軟に対応できる病院建設 Case 1 Case 2 Case 3
病院レボリューション いま,鹿島が目指すこと