特集:100年住宅をつくる ―これからの住まいへの提案―
100年住宅の具現化 Case 3 より高く伸びる超高層免震ハウジング

 天空高く伸びるスタイリッシュなタワーマンション――。都心回帰現象は,住まいを摩天楼化していく。100万ドルの夜景をひとりじめする贅沢なマンションライフは,超高層ならではの醍醐味だ。
 私たちが住まいを選ぶ上で何より大切なのは安全性であり,中でも優れた耐震性は重要な条件となる。超高層であれば,なおさら地震に対する安心を得たい。
 いま技術の進歩により,建物の規模や形状,用途に応じた多数の耐震技術が存在する。中でも「免震」は,“地震に強い建物”の代名詞となった。しかし免震構造は,超高層ビルへの適用には設計上困難な制約が伴い,特殊な装置を設置するなどコスト面で多くの課題もあって,超高層には不向きとされてきた。
 当社は,「免震」という耐震技術のブランドを,超高層マンションへ低コストで実現することを目指し,新技術「ウインカー工法」を開発。2007年3月に完成した22階建ての「ジェントルエア神宮前」(東京都渋谷区)をはじめ,12月に完成したばかりの47階建ての「キャピタルマークタワー」(東京都港区)などの超高層マンションに適用している。
 この工法は,建物と基礎の間に設置する免震装置(積層ゴム)を,「ウイングプレート」と呼ばれる特殊なプレートを介して固定することで,地震の揺れで積層ゴムに引張力が生じる際の破損を防止し,耐震性を有効に発揮することができる。
 「ウインカー工法」の誕生で,免震マンションはより高層化することが可能となった。
ジェントルエア神宮前
場所:東京都渋谷区/発注者:当社東京建築支店/設計:当社建築設計本部/規模:基礎免震構造(ウインカー工法)RC造 B2,22F 110戸 延べ 12,825m2/工期:2005年4月〜2007年3月
(東京建築支店施工)
都心の憧れの地,渋谷区神宮前に誕生した「ジェントルエア神宮前」
東京の夜景を存分に楽しむことのできる「ジェントルエア神宮前」の贅沢な眺望
ウインカー工法
圧縮力には強いが引張力に弱い積層ゴムの破損を防止するための,積層ゴムの新据付工法
ウインカー工法
超高層免震ビルの揺れ方のイメージ
超高層ビルのような縦に長いスレンダーなビルでは,大地震の際,圧縮力と引張力がかかり,複雑な揺れとなる。引張力に弱い積層ゴムは破損する恐れがある
超高層免震ビルの揺れ方のイメージ
column 老朽化マンションが「100年住宅」へと生まれ変わるとき――
旧マンション(他社施工) 「ジェントルエア神宮前」は,1973年に分譲されたマンションの建替え事業である。阪神・淡路大震災の後,耐震上の不安,設備配管の老朽化などから住民の間で建替えの機運が高まり,当社がデベロッパーとして参画し,事業・設計・施工を担当。最新鋭の技術を導入し,長く使い継ぐことのできる「100年住宅」へ生まれ変わった。
 マンションの建替えには,地権者の合意形成,建築計画,建設中の住民生活のサポートなど,様々な課題を解決しながら事業を進めなければならない。この計画も2002年に当社が事業協力者に選定されてから,地権者全員との間で等価交換契約を締結し,建替え計画がスタートするまでに,約3年の歳月が費やされた。
 今後,高度成長時代に建設された多くのマンションで,老朽化などによる建替え需要が増大すると予想される。当社は,こうした実績を活かし,設計・施工・開発の総合力を結集し,マンションの建替え事業のサポートを積極的に展開していく。

 100年住宅の具現化 Case 1 究極の超高層フリープランハウジングの実現
 100年住宅の具現化 Case 2 鹿島のハウジング技術の結集
 100年住宅の具現化 Case 3 より高く伸びる超高層免震ハウジング
 100年住宅の具現化 Case 4 住み継がれる街づくり