特集:集客の仕掛けを創り込む ――新しい時代の商業施設
Category 2 郊外型ショッピングセンター
駅から離れた市街地の郊外に広大な敷地を擁し,核テナント数店と多くの専門店が軒を連ねる。
買い物の効率性が向上し,街にコミュニティーの場を創出する。
SMARK
群馬県伊勢崎市中心部から約2.5kmの国道17号沿いにある。
大きな庇とツリー状のモニュメントが目印だ。このモニュメントは,実は小型風力発電施設。
上州名物・赤城おろしの空っ風が電力を供給する。「SMARK」のコンセプトは「地元の人が誇りに感じて笑顔になれる施設」。地元色と環境に配慮したショッピングセンターだ。
MAP 【建物概要】
場所:群馬県伊勢崎市
発注者:東京建物株式会社
基本設計:KFXデザイン,株式会社丹青社,株式会社アール
設計・監理:当社建築設計本部
規模:S造 3F一部5F,PH1F 延べ 110,900m2
2008年10月竣工(関東支店JV施工)
伊勢崎かすりをモチーフとした大庇がメインエントランスを彩る
弓と弦で構成された回遊モール
 「SMARK」に入るのは,10の大型テナントと175の専門店。建物は,カーブしたメインモールと直線のサブモールが弓と弦をなす。買い物客が自らの位置関係をつかみやすく,各地点で外の風景を楽しむことができる構成になっている。照明に伊勢崎かすりのモチーフを使うなど,内装にも地元色を取り入れた。3階奥のフードコートのテラスからは,赤城山など群馬の自然を眺望できる。
カーブしたメインモールと直線のサブモール
大庇は伝統の伊勢崎かすりがモチーフ
 地元の文化と魅力を上質に表現したい――。その要望に応えた一つの仕掛けが,エントランス前空間に張り出した色鮮やかな大庇だった。当初は列柱で庇を支えることにしていたが,吊構造の採用によってよりフレキシブルな外部空間となり,庇の迫力が増した。庇面は,伊勢崎かすりをモチーフにした大胆な縞模様で,賑やかさを表現したという。
深い青色のタイルと明るいトップライト,間接照明が対比的なメインモール。床の模様は伊勢崎かすりがモチーフ
「プロセニアム」と「アイランド」
 大庇の下にあるエントランス前空間を「プロセニアム(舞台)」に見立て,イベント施設や子どもの遊び場を設けたのも,「地元の人の笑顔づくり」を意識している。ここに,キッズ・フラワー・ランタン・リビングルームという個別のテーマを持つ4つの「アイランド」をつくり,買い物客はその間を縫って移動する仕掛けだ。
 夜になると,エントランスの長大なガラスカーテンウォールから漏れる光と外部の演出照明が,訪れる人に新たな舞台を提供する。
国内最大級の垂直軸型風力発電機大黒統括グループリーダー
 「地域性を活かした環境性能の向上を」という施主の要望は,赤城おろしを活用した風力発電に結びついた。「多くのお客様が訪れる施設なので,環境機能とシンボル性を併せ持つ風景を作ることで施主了解を頂いた」と,設計を統括した建築設計本部の大黒慎吾統括グループリーダーは振り返る。
 そうして導入されたのが,垂直軸型風力発電機を三連に縦組みした高さ約18mのカラフルなツリー型の発電塔だった。エントランス空間の前に建てられた「SMARK TOWER」は,施設のシンボルとして,建物内部からも見える環境啓蒙モニュメントになった。
 このほかにも環境配慮を行い,LEDの演出照明や,舗装面の温度を下げる透水性ILBの採用,開口部の要所にLow-Eガラスを用いるなどでCASBEEのAランクを実現している。
環境啓蒙のモニュメントにもなるSMARK TOWER
大庇下のアイランド
Others

イオンかほくショッピングセンター

イオンかほくショッピングセンター
金沢市から国道8号を北に約15km,かほく市の水田地帯にある,街づくりの中心施設。地上3階,塔屋1階,延べ80,824m2で,核店舗ジャスコと130の専門店が入る。あらゆる人にやさしいショッピングセンターを目指し,ユニバーサルデザインを積極的に採用。住民参加型植樹,壁面緑化,太陽光発電など多数の環境配慮策を実施している。
(2008年10月竣工)
けやきウォーク前橋 けやきウォーク前橋
JR前橋駅から徒歩10分程度の住宅地に位置する。4階建て,延べ98,161m2で,アピタ・紀伊國屋書店・ユナイテッドシネマを核に,150の専門店からなる。人通りの多い駅側に配置した核テナントが,人を誘導する。元々敷地内にあったけやきや桜などを保存。モール内にもけやき並木のイメージを踏襲し,地域との協調を目指す。
(2007年3月竣工)
ゆめシティ ゆめシティ
本州最西端の山口県下関市に立地。核店舗のイズミと140の専門店を備える地上5階建て,延べ80,828m2の大型商業施設。全長170m,3層モールを中心とした商空間は,内装・サインの素材や色使いなど施設細部に至るまで,ユニバーサルデザインを積極的に展開し,誰もが安全で使いやすい配慮がされている。地域の緑化方針に沿った植樹やLED照明,蓄熱空調システムなど多くの環境配慮を実施。その名の通り街づくりの中心施設である。
(2009年11月竣工)

 Category 1 都市型商業施設
 Category 2 郊外型ショッピングセンター

 Category 3 ライフスタイルセンター
 Category 4 ブランドショップ