特集:変わる教育と鹿島のソリューション

教育のシステムを支援する(カリキュラム/IT編)  IT時代の新しい教育のシステムとは何か──その実践がいよいよはじまった。当社と米国・マサチューセッツ工科大学(MIT)の共同研究から生まれた教育支援システム「Caddie」(キャディー)である。
 日本でもすでに,大阪学院大学やコア学園グループで運用が開始され,講義やゼミに活用されている。当社のエンジニアリング力が,教育の次世代像という課題に,ひとつの解答を示したものとも言えるだろう。

Caddieの描く次世代教育像
 Caddieは,インターネットをベースとして講義に関する資料を一元的に管理するシステムである。
 先生がCaddieに講義名を登録すると,講義運営に必要な機能をもったホームページが自動的に作成される。生徒はここにアクセスして教材や課題を入手し,先生と生徒,生徒間で質疑応答が行われる。こうした情報はデータベースへ体系的に蓄積され,学校の知的財産として広く活用することができる。また,講義時間や教室,学部といった制約を越え,社会人や遠隔地への教育の配信が可能となる。
 マルチメディア教材による授業や,先生と生徒間の緊密なコミュニケーションを実現し,連続性・継続性のある学習環境を提供する。Caddieを通して新しい教育スタイルが生まれることになるだろう。
 IT時代の建設業のあり方を考えるなかで,遠隔地での協調作業をテーマにMITとの共同研究から生まれたCaddieは,システムの外販も開始した。導入のコストは,運用の方法によっても異なるが,生徒数1万人規模ではひとり当たり1,000円程度に抑えられるよう配慮されている。

Caddieトップページ
教職員や生徒の最初のアクセスは,インターネット上のCaddieホームページとなる。生徒はこのトップページからログインし,学部や講義のホームページへと進む
Caddieトップページ
 
講義のトップページ
Caddieに登録している生徒は,履修する講義のホームページにアクセスする。講義の概要やスケジュールなどを提供するページが用意されており,講義の様子もビデオ映像として蓄積できる
講義のトップページ
 
講義資料の配信
講義で使用した資料は,講義の日付ごとにまとめられる。生徒はここにアクセスすることで,場所と時間を選ばずに学習できる(資料提供:大阪学院大学 白川雄三教授 ゼミナール「フードマーケティング」)
講義資料の配信
講義資料の配信
 
ディスカッション
先生と生徒はホームページ上でディスカッションすることができる。講義に参加している生徒にグループワークをさせる場合には,グループ専用のディスカッションスペースを設けることも可能である(資料提供:大阪学院大学 白川雄三教授 ゼミナール)
ディスカッション
 
課題の配信
先生は講義のホームページを通じて生徒に課題の配信を行える。課題の解答を登録する場所が用意されており,課題と解答を組み合わせて整理できる(資料提供:大阪学院大学 香川修見教授 「情報処理演習」)
課題の配信
課題の配信

講義風景 講義風景
同大学2号館 同大学2号館
Caddieを導入した大阪学院大学での講義風景と同大学2号館

教育におけるテクノロジーの衝撃
Caddieを当社とともに研究・開発したMITのジョン・R. ウィリアム教授。IT時代における教育や土木建築の在り方を専門に研究する第一人者である。今回の特集にあたって,当社へのメッセージをいただいた。
Caddie
ジョン・R. ウィリアム教授 MIT知的工学システム研究所 所長
ジョン・R. ウィリアム教授
 テクノロジーの革新がどのように教育を変えるのか──鹿島からとても光栄な寄稿依頼をいただいた。
 現在の教育は,昔とそれほど大きな違いがあるわけではない。学生は,有名な先生や教授の講義を聴くために,通学という行為を行ってきた。しかし今日になって,こうした教育のあり方が変わりつつあるように思われる。
 その要因は,テクノロジーという衝撃である。とくに遠隔教育のテクノロジーが,ビジネスシステムとしての教育に大きな変化をもたらすのだ。想像してみよう。「学校に通っていない何万という人たちの自宅や職場に向けて,昼でも夜でも時間を問わずに“教育のコンテンツ”を届けることができれば,教育産業のビジネスモデルはどう変わるのだろうか?」
 これから社会に出ようとする学生はもちろん,今日のビジネスマンには,グローバルな視野と起業精神,そしてITへの対応力が必要とされる。また企業自身も,社員個々の起業アイディア,言い換えれば人材こそがビジネスを成長させる原動力であることに気づきはじめている。そして,すべてが猛烈なスピードで変化している今日の世界では,誰もが生涯にわたって学習を続けなければならないのだ。
 「長期的,最終的な競争に勝利する真の優位性とは,“学習力の差”だけである」と,MIT製品開発革新センターのモーリス・ホームズ教授は話す。「学習し続ける」なかでは,スピードこそが重要なのである。
 ところで鹿島の学校づくりを見ると,施設を建設することに留まらず,ITシステムや教育のコンテンツも提供することで,新しいスタイルの教育を推進している。これは非常に歓迎すべき姿だ。鹿島のすばらしい最新施設やシステム,そして先駆的に展開する新しい教育スタイルに対して,学校が投資を行えば,そこで学ぶ学生の将来に何倍にもなって還元されることになろう。
 MITと鹿島は,新しいインターネット・テクノロジーの採用がもたらす教育の革新をテーマとして,10年以上も共同研究している。とくにこの2年間は,学生が大陸を越えて学べるシステム「Caddie」を共同開発してきた。日本の大学と教育のコンテンツを共有できるのも間もなくだろう。その日を楽しみに待ちつつ,MITから鹿島へ心を込めてメッセージを送る。
MITでの遠隔講義風景
MITでの遠隔講義風景




Solution0:教育・学校の「相談室」になる
Solution1:キャンパスのオリジナリティを創造する(施設/交流編)
|Solution2:教育のシステムを支援する(カリキュラム/IT編)
Solution3:学校のポテンシャルを最大化する(経営・事業コンサルタント編)