特集:KAJIMA 新エンジニアリング主義

1 ニーズをかたちにする実践力
 エンジニアリングの変貌


トータルエンジニアリングへの道
 この20年でエンジニアリングは,顧客ニーズとともに大きく変貌した。その軌跡は生産・物流分野の施設に端的に表れている。
 不動産価値が上がりつづけた経済成長期には,企業にとって工場などの生産施設は資産として「保有」することにも意義があった。しかし90年代の経済情勢の変動によって,生産施設の価値は本来の「ものづくり」の機能に特化していく。施設の企画・計画は顧客,建築の設計・建設は当社,といった従来の分業体制では,「生産効率・合理性」を極限まで追求するには限界が生じてきたのである。
 また,ITなどの先端技術の導入や,環境配慮・省エネなどの社会的要求への対応も必要となる。そして,建物と生産施設の相乗効果を最大限に発揮するために,顧客の技術・ノウハウとの統合,さらには外部の先端技術をも統合する能力が,当社に要求されるようになった。
 いわば「どのように施設をつくるか」から「どのような施設をつくるか」に業務の思想が移行したのである。業務のフェーズも,それまでの「建築と建築設備の設計・施工」から前後に広がり,生産システムや物流システムも含めた施設全体の企画・構想の段階から試運転・調整にまで拡大している。さらに,メンテナンスやアフターケアまで,建築・生産施設のライフサイクルを考慮した「トータルエンジニアリング」となることが,当社の目指すかたちである。


生産施設の例にみるエンジニアリングの変遷と業務フロー
業務フローの着色部分が当社の業務範囲。1985年,1995年をターニングポイントとして,当社の担当する業務範囲は顧客ニーズ・社会情勢の変化とともに,物流設備,情報システム,生産設備へと拡大し,プロジェクトの関与も上流・下流へと広がってきた。1996年のエンジニアリング本部設立は,2回目のターニングポイントと一致する


建築


自動ラック倉庫 工場内の物流システム
自動ラック倉庫
工場内の物流システム


化学製品生産システム
化学製品生産システム


医薬品生産システム 医薬品生産システム
医薬品生産システム
医薬品生産システム


KAJIMA印の付加価値
 企画・構想からアフターケアまでを手がける当社のトータルエンジニアリングは,とくに医薬品や食品,物流分野を中心に実績を重ねてきた。その原動力となったのが,1996年のエンジニアリング本部の設立である。
 当社では,機械,電気,情報,環境などの幅広い技術部門を有し,これらの強化に努めてきたが,顧客ニーズの多様化にともない,各部署に点在していた技術を集約し,連携を図る必要が生じてきた。エンジニアリング本部の設立によって,個々の技術が一元化され,さまざまな施設に対応できるトータルエンジニアリングが可能となったのである。
 たとえば無菌製剤工場などの医薬品製造施設においては,建設技術だけでなく,医薬品施設のエンジニアリング技術そのものが高く評価されている。現在では専業のエンジニアリング会社と肩を並べ,業界トップの一角にまで成長を遂げ,国内・海外でフルターンキーのプロジェクトの実績を重ねている。
 建設技術を基盤としながらも,生産・物流・情報などのさまざまな技術・ノウハウを蓄積し,これらを統合して施設全体の最適化を図り,付加価値を高める総合力が評価されたのだ。





0 「技術の鹿島」のエンジニアリングとは?
1 ニーズをかたちにする実践力
2 社会をつなぐ創造力
3 鹿島イズムとエンジニアリング・スピリット