特集:ITSで拡がる交通インフラのかたち

Chapter-1 国土を拓く知能

インフラとクルマのコラボレーション
 クルマ社会に浸透するIT。高速道路のETC(Electronic Toll Collection System:自動料金収受システム)は料金所でお馴染みとなり,VICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)を搭載する自動車も確実に増加している。
 交通インフラのIT化は,パソコンが一般家庭に普及するターニングポイントとなったWindows95の登場と同じ1995年,ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)が国家プロジェクトとして推進されたことにはじまる。現在,警察庁,経済産業省,国土交通省,総務省の4省庁が連携している。
 1998年には,ITSの具体的な将来像のイメージづくりのため,第1回目の「スマートウェイ推進会議」が開催された(委員長・豊田章一郎日本経団連名誉会長)。ここで発表された構想が「スマートウェイ2001:知能道路計画」である。その主要なシステムとして位置づけられたのがETCやVICSであり,現在はAHS(Advanced Cruise-Assist Highway Systems:走行支援道路システム)もそのひとつに加えられている。
 ITSの最大の特徴は,道路などの交通インフラと自動車とを,ITによって連携することにある。つまり,両者をITによってシステム化することで,研究開発が個別に進められがちだったインフラと自動車の技術のコラボレーションを図り,今までの常識を超えた新しい利用方法や運用を実現しようとするものである。
 したがって「スマートウェイ」の目的は,単にITを道路に組み込んで渋滞を緩和し,交通事故を削減することだけではない。道路が交通の共通基盤となり,それを核とした物流の効率化や,快適な交通環境の実現,さらには周辺地域の活性化をも図ろうとするものなのである。
 このように,従来はハード的なイメージの強かった道路建設とITによる情報のコラボレーションによって,一昔前は夢物語だったヴィジョンを現実のものとするITS。次章では実現段階に入ったさまざまな技術と,それを活かした道路空間利用の将来像を紹介する。
ITSを導入した交通インフラのイメージ図
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Chapter-1 国土を拓く知能
Chapter-2 ITSで変わるまちの拠点
Chapter-3 フレキシブルなインフラ整備
Chapter-4 人間とITの融合をめざして