特集:電子デバイスファシリティの新展開

Solution 2 地震リスクを事前に把握する

 近年,世界で起きた地震のうち,マグニチュード6以上の地震の約2割は日本で発生している。さらに,2000年以降,マグニチュード6以上の主な被害地震だけでも20回発生しており,日本は地震活動期に入ったとする見方も強い。いつ,どこで大地震が発生してもおかしくないと考えられている。
 すでに示したように,大地震は電子デバイス生産施設に多大な影響をおよぼす。生産装置の損傷による生産停止は,市場への供給責任を果たせなくなるだけでなく,競合他社に遅れをとることになるからだ。その意味で,大地震が生産施設に与えるリスクを予め把握しておくことは,事前措置,あるいは地震後の操業再開を早めるだけでなく,新たな戦略を生む手がかりにもなる。

地震リスクを先どりする
 当社では,地震の危険度と施設全体の被害額を簡易に推定するシステムを開発した。〈地震リスク簡易評価システム〉である。
 地震の危険度とは,その土地での想定最大震度のことを指す。本システムでは,施設の所在地を入力すれば緯度・経度と地震情報,地盤情報を元に最大震度が表示される。そこから,施設の生産品目,耐震グレード,フロアの数,建物規模などの限られた情報を基に施設の予想最大損失率(PML)と操業中断期間(BI)が算出できるのだ。
 これらのデータから施設建屋の耐震グレードや所在地の違いによる地震リスク軽減策の概略的な検討ができる。地震リスクの観点から施設運営をサポートするシミュレーションシステムとしても利用可能である。
フラットパネルディスプレイ展でのデモンストレーション
想定最大震度と,それにともなう生産装置まで含んだ最大想定地震被害金額が算出される〈地震危険度解析〉(上)と〈地震リスク簡易評価〉(下)の入力画面
地震リスクの評価から得られた費用対効果イメージ。耐震グレード(上)と敷地(下)でそれぞれ割り出せ,新設だけでなく,既存施設の設備増強にも役立てられる
電子デバイス工場を知るキーワード
予想最大損失率(PML:Probable Maximum Loss)想定される大地震により生じる直接的な物的被害額を,「建物と生産装置全体のコストに対する損失率」として表す。地震危険度の低い地域,あるいは建屋の耐震グレードが高いほど,PMLは小さくなる。
操業中断期間(BI:Business Interruption)想定される大地震に対して,建物や生産装置が損傷し,生産が満足に行えない状態を日数で示したもの。



Solution 1 多層免震大空間
Solution 2 地震リスクを事前に把握する
Solution 3 電子デバイス生産施設のトータルエンジニアリング
Prospect  物理・化学と建築のコラボレーションをめざして