特集:建設業をよく知ってもらうために 鹿島の魅力発信者たち![]() |
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各種セミナーでの講演,現場見学会の開催などで,当社は情報開示を進めている。 技術者の目線ではなく,「一般の人」や「生活者」の立場で伝える情報は,分かり易さに重点が置かれる。 そのどれもが,聞く人,見る人の共感を得ている。 |
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「地震の話をすることで,たくさんの人が地震防災のスタートラインに立ってもらえれば嬉しい」。講演ではまず「分かり易さ」に気を配る。「地震を自然現象の一つとして理解し,その中で自分の置かれている状況が分かると,自発的に何をするか考えられるようになるのです」という。 地震に強い家を建てるのも防災技術。でも建てる人がその気にならないと,せっかくの技術も活かせない。地震が来たらあなたの家は崩壊しますよ,と脅すだけでは人は動かないのだ。 講演の後は質疑応答。多彩な質問が飛んでくる。「私の専門でないから分かりません」は敗北と思っている。「一般の人の考える地震のイメージは,学者が持っているのよりずっと広いのです」。準備は常に怠らない。 講演の対象は一般市民から専門家まで様々。企業の防災訓練に招待されて講演することも多い。講演をして「そうだったのですか」と納得してもらうと,話をして良かったなと思う。 昨年刊行した『天災日記』(鹿島出版会)が話題を呼んだ。講演やマスコミの関心は地震被害のことが多いが,この本は,一般人による日記を元に,関東大震災の復興の模様や人々の助け合いの様子を描いた。「それを読み解くことで,大地震を実感し,自然を理解して欲しいと思ったのです」。 「講演や本の出版を,会社がどんどんやれといってくれる。社員それぞれが出来る範囲で情報発信するのを勧めてくれる会社はありがたい」という。業務に限らず,PTAの役員でもボランティアでもいい。とにかく社会に首を突っ込んで地道な活動をする。「そして堂々と『私は鹿島の人間です』とアピールすればいいのです」。武村さんと関わった人はたいてい「鹿島ってすごい」と思ってくれるという。 「その意味でも,広報の役割は大きい。いくら立派な技術を持っていても,世の中に理解されなければ宝の持ち腐れになる。一般の人に分かってもらえるレベルでの情報発信が,いかに大事かということです」。 ところが「技術系の人の中には『アウトリーチ(社会に向けた教育普及活動)』を軽視する人もいる」という。象牙の塔に閉じこもらないで,どうしたら一般の人に理解されるかに腐心すべきだ,というのである。 「ものを造る高度な技術だけでは,社会貢献は難しい時代になっている。研究者,技術者も身の周りの歴史や自然環境にまで視野を広げる必要性を感じます」。富士山のように日本一の高さを誇るには,裾野の広さも日本一でなければならない。言いたいことを伝えられるコミュニケーション能力の養成を――。武村さんのアドバイスである。 3年ほど前から気象庁で「気象庁職員はどうあって欲しいか」という講演をしている。そこでも,専門も重要だが,雑学的な広い視野が絶対不可欠という話をしている。民間企業の研究者と同じである。 |
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土木技術者として忘れてはいけないこと,それは「生活者の目線でものを見て,考えること」という。「建設会社に勤務する私たちは『つくる』側から考えてしまう宿命を負う。でも一番大切なのは,エンドユーザーつまり生活者の視点なのです」。 3年前に縁あって土木学会誌の編集委員長を拝命した。「チャンスだと思いましたね。土木学会誌の編集を通じて『生活者の目線』から,大勢の方々とコミュニケーションしたいと考えました」。どうすれば読者が土木をより身近に感じてくれるか,という視点だ。 編集委員長の任期は2年だが,終始このコンセプトを貫いた。特に特集のテーマ選定には気を使った。主婦としての目線も役に立った。試行錯誤の編集作業だったが,読者から期待していた以上の反響が寄せられて,編集者冥利に尽きる,と喜んだりもした。「良い経験をさせてもらったと思っています」と振り返る。 文科省や国交省などの審議会や研究会では,構成メンバーは基礎研究が専門の学者が多いから,理論中心の議論になりがちになる。「議論が白熱してくると,つい実践的なスタンスで発言してしまう。建設会社の土木系社員としての顔になるのですね。そんな時でも『生活者の立場』は忘れないようにしています」。 「いろいろな機会に,社員の皆さんが地道に情報を発信してきた成果が少しずつ結実しているのがわかる。そのバロメーターの一つになるのが,学生の間で土木人気が高まっている事実です」。天野さんの出身大学の後輩にも,鹿島で土木の仕事を希望する学生が確実に増えているという。「リクルーターの仕事もしているので,それを敏感に実感します」。 会社からは「多方面に顔を出すのは,人脈作りにも,情報発信にもメリットは大きい」といってもらっている。実務が発生しない,宿題を持って帰ることはしない,社外活動は業務の1割までと“自己規制”もしている。 |
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「実際の解体に際しては,新技術として注目されることを想定し,当社のアピールも考慮し,当初から現場見学会開催を前提としました」。過去の大規模工事現場の見学対応から2,000人規模を想定。技術研究所の見学ツアーを参考に現場スタッフで対応するなど万全の体制を敷いた。 約5ヵ月間の開催期間中の見学者数は3,863名。当初想定のおよそ2倍に上った。見学回数336回は1日3回以上の頻度で実施したことになる。「マスコミなどで取り上げられることも多く,建築工事以上に建設業のイメージを一新しました。いまも社外の人から解体工事の話題で好意的に話を聞かれます」と,情報開示作戦の結果に満足している。 「解体工事でこれほどの注目を集めた現場はありません。この経験をこれからの情報発信に活かしたいですね」。 |
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国内ゼネコン初の女性現場副所長として,テレビや新聞,雑誌などに登場する機会が増えた。「所長の理解を得て,業務に支障のない範囲で対応しています」。土木の仕事を知ってもらえる良い機会だが,工事現場を持つ立場での情報発信活動は結構忙しい。 先ごろ,東京・渋谷で開かれた女子学生向けキャリアセミナー。須田さんは「土木の仕事の魅力と私たちの働き方」をテーマに講演した。聴衆の多くは就職活動を控えた大学生だ。 大学生時代の現場体験がゼネコンへ進む原点となったこと,新入社員のときに出会った「土木技術者女性の会」の大先輩たちの働き方が仕事を続ける勇気をくれたこと,2児の母親業と仕事のバランスの取り方,技術研究所での研究内容と設計・現場へのつながり,仕事を続けるこつなどを丁寧に説明した。 「土木の仕事は,言葉だけでは伝わらないところも多い。ですから,できるだけ現場を見てもらう」。学生や一般の方に工事現場を見てもらうと,みんな,スケールの大きさに圧倒され,感動する。そして,完成した構造物には自然に愛着を持ってくれるようになる。 「技術研究所時代の役割は『現場と研究の橋渡し』でしたが,いまは『土木や工事現場と一般の方の橋渡し』なのかもしれませんね」。 一般の方,とくに中・高・大学生が読んで分かるものを目指し,「土木技術者女性の会」で東京ウィメンズプラザの助成を受けて冊子を作成。会員19名に仕事の内容や働き方,後輩へのアドバイスを執筆してもらった。いまは,情報を必要としている女子学生に,一人でも多く,冊子の存在を知ってもらおうと普及活動に力を入れている。 学生には,景気などに左右されずに,土木の世界に飛び込んできて欲しい,とメッセージを送る。 目標は「100年のインフラを造ること」だ。現場を見てもらうことで技術者の真摯な気持ちが見学者に伝わる。これからもいろいろな人に現場を見てもらい建設業の応援団を増やしていきたいと意気込む。 |
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地下の土木工事は進捗状況が見えないため,理解されにくい。「人の気付かないところに造り上げた構造物が,実は多くの人の生活を支えているのを知ってもらいたくて」展開したのが現場見学会だった。これまでの見学者は,小学生から社会人まで1,000人超。「建設という仕事への関心や社会的貢献を感じてもらうだけでなく,働く人にも快適な場所であることを見てほしかった」という。 スムーズに見学できるよう,設備の充実や通路の確保などを配慮した。「親子ふれあい現場見学会」では,見るだけでなく,土木技術を体験できるイベントを企画。シールド発進式では地元の小学生に,地組みしたセグメントにメッセージを書いてもらった。シールドマシンへの驚きや現場への激励。「こどもたちの純粋な言葉が心に響きました」。遊び心を交えながら建設業の情報を魅力的に発信する。 |
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■ Chapter
1 情報発信の最先端で ■ Chapter 2 鹿島環境学校の教授たち ■ Chapter 3 次世代へ魅力を引き継ぐ ■ Chapter 4 業界団体によるイメージアップへの取組み |