特集:建築施工革命序論

Revolution-3 躯体工事を攻めるクリエイティヴな現場たち
 全国で工事を行う当社の建築現場には,さまざまな創意工夫をこらして施工を行う「クリエイティヴな現場」がまだまだ存在する。その一端として,海老名の周辺で施工中の超高層マンション4件を併せて紹介したい。

 建設業はそれぞれの敷地環境の特性によって条件が異なるため,同一の工事はありえない。当然ながらここで紹介する4件の超高層マンションでも,同じ工法はない。
 共通するのは工期短縮とコスト削減を目指すことであり,合理化のターゲットは躯体工事である。躯体の建設段階こそが,その後に行われる各階内部の建設工程の「リード」となり,工事費全体に占める比率が大きな工程だからだ。工程表の出来高曲線でいえば,最も急な躯体工事部分の勾配を,さらに“立てる”ことが目標となる。
 それはまた,技術的な知恵と創意工夫を活かすことのできるポイントでもある。
工程表の出来高曲線にみる躯体工事の合理化の例
Episode 1 126回転用される型枠
(仮称)藤沢川名マンション新築工事
場所:神奈川県藤沢市川名
発注者:伊藤忠商事,当社開発事業本部
設計:当社横浜支店建築設計部
規模:SRC造(一部RC造) 地下1階,地上14階延べ88,925m2
工期:2000年3月〜2003年6月
施工:当社横浜支店JV

総住戸数750戸の大規模プロジェクトのシステム型枠の施工状況(右)。工区の分割,壁と床の分割工事により,システム型枠を転用する(5工区14フロアで70回,2棟目を合わせて計126回転用)。転用回数の増大,作業員の平準化による作業効率向上,サイトPCa化によって,施工の合理化を実現した。
(仮称)藤沢川名マンション新築工事
(仮称)藤沢川名マンション新築工事
Episode 2 柱は工場で,梁は現場でつくる
(仮称)山下町マンション新築工事
場所:神奈川県横浜市中区山下町
発注者:当社開発事業本部,リクルートコスモス
設計:当社横浜支店建築設計部
規模:RC造(HiRC工法) 地下1階,地上25階(タワー棟),地上14階(板状棟) 延べ30,907m2
工期:2001年10月〜2003年9月
施工:当社横浜支店

PCa化された柱(左),システム型枠による梁(右)の施工状況。この敷地では大型部材のトレーラー搬入が困難なため,梁は現場打ちで,柱は工場製作でPCa化した。また梁は,鉄筋を地上で組んでクレーンで揚げ,システム型枠を採用することで,さらなる合理化を実現している。
(仮称)山下町マンション新築工事
(仮称)山下町マンション新築工事
Episode 3 ネジ継手で組み立てる超高層
ヨコハマポートサイドF-1街区
第一種市街地再開発事業
施設建築物新築工事及び既存建物等解体除去工事

場所:神奈川県横浜市神奈川区栄町
発注者:ヨコハマポートサイドF-1街区市街地再開発組合
設計:三菱地所設計
規模:RC造(HiRC工法) 地下1階,地上42階(2棟)地下1階,地上6階(1棟)ほか6棟 延べ116,500m2
工期:1999年9月〜2003年11月
施工:当社横浜支店JV
工場製作のPCa部材
工場製作のPCa部材。複数の部材をネジ継手で連結した状態でコンクリートを工場打設。単体の部材で搬送し,現場で同様に組み立て直すため,非常に高精度なジョイントが実現した。パネルゾーン(柱と梁の接合部)で梁筋を,柱頭で柱筋をネジ継手にてジョイントする。
Episode 4 工場で接合する柱と梁
上大岡B地区第一種市街地再開発事業に伴う施設建築物建設工事
場所:神奈川県横浜市港南区上大岡西
発注者:上大岡B地区市街地再開発組合
設計:石本建築事務所
規模:RC造(HiRC工法)一部S造 地下2階,地上30階延べ59,391m2
工期:2001年7月〜2003年11月
施工:当社横浜支店JV
上大岡B地区第一種市街地再開発事業に伴う施設建築物建設工事
運搬可能な大きさにつくられたパネルゾーン(柱と梁の接合部)一体型PCa部材。労力が最も必要なパネルゾーンの工事をPCa化することで,現場での作業を低減させ,品質と安全性の向上が図られた。「乾式超高層」へと限りなく近づいている。


Revolution-0 いまこそ施工革命宣言のとき
Revolution-1 タワークレーンのいない超高層工事
Revolution-2 座談会:総合力を現場に結集せよ
Revolution-3 躯体工事を攻めるクリエイティヴな現場たち