特集:新たな建築生産への取組み

合理化設計施工への取り組み−CFT構造

 合理化設計施工を具現化する代表的な手法のもう一つはCFT構造である。CFT構造は,断面が角形または円形の鋼管にコンクリートを充填して柱とし,鉄骨の梁を組合わせる。

 鉄筋コンクリート造,鉄骨鉄筋コンクリート造,鉄骨造に続く第4の構造といわれる。剛性・耐力・変形性能・耐火性能などの面で優れ,柱の断面は小さくても強靭で,構造をスリムにして有効空間を広くとることができる。


スリムな構造は,空間の有効率を最大限にすることが必要な倉庫や配送センターに最適(写真はカジマフラットスラブ工法と組合わせて施工中の配送センター内部)



CFTと制震技術(ハニカムダンパ)を複合して採用している日本製紙研究開発センター(東京都北区)

CFT構造は,鉄骨造に比べて鋼材量や耐火被覆を少なくできるため,躯体工事費を約10%低減できる。鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造と比べても,鉄筋,型枠作業がなくなるため鉄骨造なみの短工期が可能。ニューNEOS構法と同様に,南洋材型枠を使用せず廃材もほとんど発生しない省資源型の地球環境に優しい構造である。

大きな荷重を受けた時,鋼管が樽のタガのようにがっしりと拘束して崩壊を防ぐ(コンファインド効果)

コンファインド効果によって鋼管の局部座屈を抑制し,座屈後の耐力劣化を緩和

耐火被覆の比較 コンクリートには高い熱吸収能力があるため,鋼管柱と比べてCFT柱は耐火被覆を減らしたり,条件によっては無耐火被覆も可能

無耐火加熱時の座屈比較 充填された高強度コンクリートが,優れた熱吸収能力を発揮し座屈を抑制


 当社のCFT構造の特長は,材料の使用範囲が広く,高強度材料の使用も可能な点にある。当社の設計・施工により昨年4月に竣工した小倉駅ビルでは,他社に先駆けて780N鋼のCFTを採用し,モノレール駅の大スパン架構を実現させた。

 更に他社との差別化をはかるために,当社の開発技術との複合化により高い相乗効果をねらっている。日本製紙研究棟やマルイト札幌ビルでは,CFT構造と当社の制震技術とが複合して採用されている。また,広い空間を実現したフラットスラブと組み合わせた配送センターも施工中である。

 このように,CFT構造は,設計施工ならではの限りない可能性のある技術なのである。


小倉駅ビル(北九州市)。建築では初めての780N鋼を使ったCFTによって,モノレール駅の大スパン架構を実現





キーワードは「合理化」と「情報化」
合理化設計施工への取り組み−ニューNEOS構法
|合理化設計施工への取り組み−CFT構造
情報化設計施工への取り組み−構造データベースCAD−LINCS