辰野金吾氏設計の名建築
東京駅丸の内駅舎の創建は,1914(大正3)年。当時,神戸まで全通した国鉄東海道本線の始発・新橋駅と,北の玄関口・日本鉄道の上野駅を結ぶ中央停車場として開業した。
設計は明治・大正期を代表する建築家・辰野金吾氏による。地上3階建て,南北に広がる鉄骨レンガ造の建物は延長約335m。レンガ造としてはわが国最大規模を誇る。赤レンガに白い石材を配した華やかな西洋建築は「辰野式フリー・クラシック」と称され,辰野氏の建築作品の集大成として高く評価される名建築である。2003年に国の重要文化財に指定された。
戦災復興で現在の姿へ
東京駅丸の内駅舎が現在の姿になったのは,1947(昭和22)年である。関東大震災にも耐え抜いた強固な躯体を誇る駅舎が,終戦間近の1945年5月25日の東京大空襲で炎上。華麗なドームや屋根は焼け落ち,内装は焼失した。
戦後直ちに復旧工事が行われ,辰野氏の設計を踏襲しながらも,3階部分は撤去して2階建てとし,ドーム型の南北の屋根は八角形で施工された。早期建直しを目指し,数年間の利用を視野に入れた応急工事だったが,半世紀の時を越えたいまも使い続けることができたのは,当時の優れた建設技術と工事関係者の努力の賜物といえる。
創建時の姿が甦る
2007年4月,「東京駅丸の内駅舎保存・復原工事」に着手した。事業主のJR東日本の計画概要によると,「駅舎の安全性と利便性の向上を図りながら,駅舎の恒久的な活用を実現するとともに,文化的遺産である歴史的建造物を未来に継承し,首都東京の風格ある都市空間の形成に貢献する」一大プロジェクトである。
本工事では,現存する駅舎を可能な限り保存・活用するとともに,戦災で焼失した屋根,南北ドームなどを新たに復原し,創建時の姿に戻す。さらに,地下1・2階を新設して,駐車場・機械室などを整備。より充実した建物機能を確保するとともに,既存駅舎の耐震補強策として,免震構造を採用する。
当社JVは,最先端の施工技術と歴史的建造物の保存・復原に関する経験・実績を活かし,土木・建築が一丸となって,このプロジェクトに取り組んでいる。
時を越えて,赤レンガ駅舎が甦る。
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