特集:鹿島の内部統制―より信頼される会社を目指して
内部統制について 後藤法律事務所 後藤啓二
社会が求める内部統制とはどのようなものだろうか。
企業のコンプライアンス,リスク管理に詳しい後藤啓二弁護士に聞いた。
後藤啓二ごとう けいじ
1959年,神戸市生まれ。
1982年東京大学法学部卒業後,警察庁入庁。
警察庁企画官,大阪府警察・愛知県警察各部長のほか,内閣法制局参事官補,内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)付参事官等を歴任。
2005年退官後,弁護士登録。
西村ときわ法律事務所を経て,2007年後藤法律事務所設立。
企業のコンプライアンス,リスクマネジメント,企業防衛等の企業法務のほか,児童買春・児童ポルノ問題,子どもの安全,犯罪被害者支援,インターネットをめぐる法律問題等に取り組む。
著書に『会社法・施行規則が定める内部統制』,『リスク要因からみた企業不祥事対応の実務』(中央経済社),『企業コンプライアンス』(文春新書),『なぜ被害者より加害者を助けるのか理不尽な法制度を糺す』(産経新聞出版社)ほか
 内部統制とは,一般用語としては,企業が不適切な業務を行わないような仕組みのことをいいます。このような意味の内部統制はほとんどすべての企業において自然に備わっているものです。一定規模以上の企業であれば,法律違反を犯さないように,あるいは,甘い見通しで事業を遂行しないように社内ルールや決裁ルールなどが整備されています。このような内部統制について最近企業に整備するよう会社法と金融商品取引法で求められることとなりました。
 法律でこのような体制の整備が求められたのは,企業不祥事の多発を受けたものです。最近,コンプライアンス体制やリスク管理体制の不備を原因として不祥事が多発し,また,粉飾決算も多く見受けられます。そこで,法律で,企業に対してコンプライアンス体制やリスク管理体制を中核とする内部統制システムを整備して,法律違反などの不祥事をできるだけ少なくするように求めるようになったわけです。
 注意しなければならないのは,法律で求められたから内部統制システムを整備しなければならないわけではないということです。企業不祥事に対する国民の目は益々厳しくなり,コンプライアンス違反や甘いリスク管理の結果,巨額の損失を蒙り,中には会社の存続が危ぶまれる事態に至った企業は少なくありません。内部統制システムの整備により,法律違反や甘いリスク管理を少なくすることができ損失を防止することができるのみならず,取引先や官庁,一般国民から高い評価を受けることになり,これらによる企業価値の向上は極めて大きいものがあるのです。ですから,内部統制システムの整備は,企業自身のため,社員自らのために有益なものと位置づけて,取り組んでいく必要があります。
 建設業を取り巻く環境は近年大きく変化し,とりわけ高い企業倫理,コンプライアンスの確立が求められています。内部統制の中核であるコンプライアンスについて一点注意すべき点は,コンプライアンスとは法律に違反さえしなければいいということではないということです。コンプライアンスとは法律違反のみならずグレーな行為をしないことまで意味します。コンプライアンス体制については会社でコンプライアンスマニュアルなどの規定や組織を整備し,研修も行われていることと思います。しかし,会社の側でやってはいけないことをすべて教えることができるわけではありません。社員一人一人が,自分の頭で,マニュアルに書いてあろうがなかろうが,社会人としてやってはいけないことはやらない,という姿勢で臨むことが必要で,このことは会社も望んでいることなのです。
 4月からは整備した内部統制について社員一人一人が運用する段階に入ると聞いております。建設業界のリーディングカンパニーである鹿島が率先して内部統制を確立し,手本を示すことが期待されています。鹿島社員の皆さんの更なる努力を期待しております。

 Q&A 基本編
 内部統制とは
 当社グループの内部統制の整備
 内部統制について
 Q&A 実務編