特集:鹿島の内部統制―より信頼される会社を目指して
100の会社があれば100通りの内部統制が存在します。規模,業種によっても決まったものはありません。故に,一般に掴み難い概念でもあります。「自分は内部統制にどうかかわっているの?」「運用の注意点は?」といった当社社員の様々な内部統制に関する質問に,財務報告に係る内部統制プロジェクトチームのメンバーに答えていただきました。
Q&A 実践編 Q1 内部統制の整備は,限られた現場や支店,部署で行われるものなのでしょうか(現場・工務系社員)
A:
内部統制は,全ての業務に組み込まれ,組織内の全ての人が担うものです。例えば,不適正な会計,過重労働,情報漏洩などは,担当業務に関係なく,全社員が抱えるリスクです。具体的には,社員が作成した精算書のチェックは経理担当者をはじめとする第三者が行い,勤務状況は人事オンラインによる勤務カードで管理され,電子メールなどITを利用する場合は,「情報セキュリティ対策行動規範」に基づいた行動を徹底する,というようなリスクを軽減するための内部統制手続があります。従って全社員が内部統制の整備に関わりがあるといえます。

Q2 自分は経理を担当しておらず,内部統制といわれてもピンときません。私の仕事でかかわるものはありますか(本社・事務系社員)
A:
勤務カードの入力や経費精算といった日常業務も最終的には全て財務報告に結びつきます。直接的に文書化や評価作業を行うことがないとはいえ,経理担当以外の皆さんも内部統制とは決して無関係ではありません。

Q3 財務報告に係る内部統制において不備が発見された場合は,どうなるのでしょうか(支店・工務系社員)
A:
文書化されたとおりに業務が行われていない,そもそもルールの整備が十分ではないなどの不備が見つかった場合,運用の徹底や業務の見直しなどの改善を行い,期末日までに不備を解消する必要があります。もし期末日までに解消できず,その金額的・質的な影響が大きい場合,当社の内部統制には重要な欠陥があると「内部統制報告書」に記載しなくてはなりません。これは当社の財務報告にミスや誤りの可能性があることを表しており,市場の信頼を失うことになりかねませんので,翌年度に早急に改善しなくてはなりません。

Q4 内部統制報告制度がスタートしたので,いままでの監査部の監査だけでなく監査法人の監査などがあるのでしょうか(現場・所長)
A: 監査法人は「内部統制報告書」の内容を監査するにあたり,実際に行われている業務が,文書化された内容と合致していることを実地確認するために,自ら現場や本支店を監査します。なお,監査部による内部統制監査も別途行われます。

Q5 内部統制手続が細かく,残す証跡(内部統制手続を実施した根拠となる資料)も多いように思います(現場・事務系社員)
A:これからは,万が一,何か問題が発生したとき,「知りませんでした」「自分はきちんとやっていました」と口で説明するだけでは通用しません。 人間はミスを犯すものだという前提で,それを防ぐ仕組みが内部統制です。詳細な証跡を残すことは,不測の事態が起こったとき,自分を守ってくれる仕組みでもあることを理解しましょう。

Q6 内部統制を運用する上で,注意すべき点はなんでしょうか(現場・工務系社員)
A:我々は,法と倫理,社内規程に則って業務を遂行する義務があります。内部統制を運用するにあたり,リスク管理の観点からもPDCAサイクルの活用を呼びかけています。「Plan(計画)→Do(実行)→Check(確認)→Action(改善)」で自分の業務をいま一度自己点検してください。マニュアル(Plan)もなく属人的に仕事をしていませんか?自分が行った作業について確認(Check)をする人がいるでしょうか?常に作業を改善(Action)する環境がありますか?もしも,心当たりがあるようでしたら,仕事の見直しをしましょう。それが,内部統制実現への第一歩となるのです。
財務報告に係る内部統制プロジェクトチームは,経営企画部,財務本部主計部,監査部,関連事業部,海外法人統括部,ITソリューション部など本社の複数の部署からなる。毎週1回ミーティングを開き,約100項目のプロジェクト遂行上の課題について,対応方針の検討と進捗管理を行っている

 Q&A 基本編
 内部統制とは
 当社グループの内部統制の整備
 内部統制について
 Q&A 実務編