特集:スタジアム2000![]() 各々のスタジアムは,W杯の仕様に対応しつつ,大規模で独創的なつくりをしている。それ故,施工においても高度な技術力が必要となる。 ここでは,スタジアム建築で最も重要な構成要素である芝と大屋根の工事を紹介し,大空間を支える技術について,日本大学の斎藤教授らからお話を伺う。 |
●最高品質の芝をつくる 〜床土の構築から芝の選定・管理まで〜 芝は5種類をブレンドさせる 静岡スタジアム エコパ 芝の育成には床土が適切に作られていなければならない。床土は保温性と排水性が求められ,その土壌としては砂が最も適している。静岡スタジアムでは砂の種類や砂の粒の大きさ,配合にも入念な検討をし,約30cmの深さに2層に分けて敷き詰めた。なお,床砂にまく芝の種類は「寒地型」と「暖地型」の二つに分けられる。同スタジアムでは寒地型の5種類の芝が採用された。 |
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冬の寒さから芝を守るシステム 埼玉スタジアム2002 理想的な芝とは,適度な弾力性と柔軟性をもっていること,激しい使用に耐えうること,管理がしやすいことなどが挙げられる。ところがスタジアムでの芝の育成は,決して良い環境とは言えない。高い屋根や客席が芝面に日影をつくり,周囲を囲んだスタンドが風通しを悪くし,芝に悪影響を与える。また,わが国では四季があり,高温多湿という気象条件で病害虫や雑草害などが発生しやすい環境にある。 埼玉スタジアムでは,当社の開発した地温コントロールシステムが採用される。このシステムは気温が低い冬には温水,高い夏には冷水が,ピッチの下に張り巡らされた管を回る。これにより,一年中,最適な土壌温度を維持することができる。 当社では緑化試験場等の研究施設において芝の選定,床土構造の選定,芝管理に至るまで,様々な研究活動を行っている。 |
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●シンボルとなる大屋根をつくる 〜鉄骨トラスと膜屋根からなる〜 鉄骨トラス工事 クレーンによる1本吊りでかける 静岡スタジアム エコパ 着工の遅れからフィールド内にクレーンを設置することができず,鉄骨トラスを外周から吊り上げて設置させなければならなかった。そこでトラスの部材や形状を変更,当初100t近くあったトラスユニットは約70tまで軽量化され,650tクレーンによる1本吊りが可能となった。工事ではスタンド外側で組立てられたトラスユニットをクレーンで吊り上げ,スタンド上部に設けられたユニット台座に乗せ固定させる。この画期的工法により,仮設足場の大半を無くすことができ,工期も短縮することができた。 |
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空中でつなぎ合わせてかける 新潟スタジアム 屋根を支える4本の鉄骨アーチは,大きく井桁状に組まれている。鉄骨アーチを交差させることによって相互にアーチを補強させるためである。そしてアーチ脚部にかかる力をスタンド外周を走るテンションリングで支えている。アーチの組立てでは,地組みされた鉄骨ユニットを上空でつなぎ合わせていった。そのユニット1基は最大141t。他のスタジアムのユニットと比べても最も重い。この吊り上げには,「ツッターニ」という,部材を安全に斜め吊りすることができる当社開発の装置を使用した。 |
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膜張り工事
移動式機械での膜張り 埼玉スタジアム2002 屋根の仕上げ材には,軽くて丈夫なテフロン膜を使用している。工事では西武ドームで使われた「膜張マッセ」という自走式のスプレッダーに改良を加えて使用している。この機械は,屋根鉄骨をレールとして,ロール状に巻いた膜を巻き出しながら移動しつつ,膜の両端を伸ばすことまで行う。作業員は膜を屋根部材に接合させるだけであり,作業の効率化が図られている。 |
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移動式足場を使っての膜張り 東京スタジアム テフロン膜を屋根の下側から張るため,スタンド下部に自走式の移動式足場が組立てられた。足場の脚部にはレールが敷かれており,1ブロックの工事が終わると自走で次の施工場所まで移動するようにした。仮設足場で屋根を囲む必要が無くなり,足場の組立や解体に伴うコストを削減でき,工期が短縮された。 |
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仮設足場を無くしての膜張り 静岡スタジアム エコパ スタジアム工事で最も多く利用されているクレーンを利用しての膜張りを行った。取り付けでは,ロール状となったテフロン膜をスプレッダーに装着,クレーンで吊り上げ膜を屋根接合部に張り合わせる。屋根トラス上部を鉄骨パイプから鉄板に変更したため,作業員は広い鉄板上で作業をすることができた。このため,膜張りのための仮設足場が要らず,安全に工事を進めることができた。 |
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