特集:鹿島イズムを受け継ぐ戸建免震

0 「壊れない家」から「揺れない家」へ

通常の住宅 免震住宅 インテリア被災の脅威
 左の連続写真は,当社の技術研究所で行われた戸建住宅免震システムの実験VTR映像である。上が免震システムのない状態,下は免震システムを稼動した状態を示している。この実験で加えられた地震波は,1995年の阪神・淡路大震災と同等の820ガル(震度7相当)だ。
 未曾有の大惨事となった阪神・淡路大震災は,早朝に発生した。このため,ほとんどの人々が自宅で被災し,家屋の損壊や火災によって多くの死傷者を出す結果となった。そして全半壊や火災を免れた住宅でも,家具や電器製品の転倒・落下によって下敷きとなったり,逃げ道をふさがれる被害が多発したのである。じつに,負傷者の約半数がこうした原因によるものであったと推定されている。
 建物が壊れなくても,人や家財が大きな被害を受ける──「インテリア被災」の問題が,大きくクローズアップされたのである。

浸透する免震技術
 「揺れない家」が欲しい──建物に伝わる地震エネルギーを大幅に軽減することで,地面が揺れても建物の揺れを防ぐ免震技術へのニーズは,オフィスビルだけでなく住宅市場でも確実に高まっている。これまで当社は,受注形式の建設事業のほか,マンションの開発事業を通じても,高品質の免震集合住宅を広く一般消費者市場に提供してきた。
 そして今,より多くの人々に安全と安心を提供するために,当社の眼差しは,戸建住宅にも向けられている。阪神・淡路大震災後,戸建免震へのニーズが高まるなかで,工事手続きの一部が簡素化され,普及への道が大きく開かれることとなり,当社の培ってきた多様な地震エンジニアリングが戸建住宅にも浸透しはじめたのである。
 鹿島の技術は,どのように戸建免震に活かされているのだろうか? この特集では,「技術」「生活」「事業」の側・から,地震エンジニアリングという当社の伝統が継承されていく姿を描いてみたい。


「通常の戸建住宅」 矢印 「鹿島の戸建住宅免震システム」


免震技術をめぐる社会の動き
 免震構造では,地震エネルギーを装置が吸収することで,建物の躯体にとどまらず,建具や配管,インテリアなどの非構造部分に対しても地震の影響を大幅に軽減する。
 一方で,免震装置は個々の建物の形状や構造形式などに合わせて設置させるため,個別性が高く,一般化が困難である。工事の実施までには,日本建築センターの個別評定,大臣認定,特定行政庁の建築確認といった,一連の手続きが必要になる。
 こうしたなかで,阪神・淡路大震災後の免震に対するニーズの高まりを受けて,工事手続きの一部が簡素化された。  ビルに比べて規模の小さな戸建住宅については,免震に関する構法,材料,部品といった単位で技術的な基準を満たして一般認定を取得すれば,建築確認だけで許認可が得られるようになり,その普及に大きな道が開かれたのである。
 そして当社の戸建住宅免震システムでは,次ページ以降で紹介するように,免震装置にボールベアリングを用いたことが特徴となっている。





0 「壊れない家」から「揺れない家」へ
1 安全と安心を普及する技術力
2 「真の安心感」を広めるかたち
3 「地震エンジニアリングの鹿島」の伝統と継承