特集:地震リスクを考える

インタビュー:
    地震リスクにおける今後の取組みについて


 都市防災における当社の技術を,より具体的に判りやすい形で提案する−当社で長年にわたり都市防災の取組みに携わってきた草野直幹氏。現在,新しい試みの一つとされているリスクマネジメントで,中心となって活躍中である。地震リスクにおける今後の取組みについて,お話を伺った。

草野社長 イー・アール・エス 社長
草野 直幹 (くさの なおき)

 鹿島はこれまで,地震の予測システムや耐震技術など,防災技術において土木・建築を問わず,またハードからソフトの面まで,あらゆる形で研究と開発の実績を上げてきたと思います。都市の機能は,超高層ビルの建設や高速道路の整備などの目覚しい発達に伴い,より多様化し複雑化してきました。そのため地震発生時に起こる被害も,4年前の阪神・淡路大震災で明らかになったように,あらゆるケースが生じ複雑に絡み合っています。都市防災に求められているのは,総合的な取組みだとも言えるでしょう。当社では,小堀先生が中心となって発足したSEEHM研究会の活動などをはじめ,社会工学的な視点に立った都市防災を推進してきました。そして,いかにして都市防災を定着させ,鹿島の総合力をもって社会に貢献するか−これは都市防災に取り組む鹿島にとって一貫したテーマだと思います。

 私は入社以来,武藤研究室で耐震技術を,土木設計本部と原子力室では土木構造物の耐震の研究に携わってきました。96年,鹿島の保有技術をトータルにコーディネートするという方針のもとで設置されたエンジニアリング本部へ移り,都市防災のエンジニアリングに取り組んできました。そうした中で感じたことは,都市防災の必要性が社会的に認識されているものの,いざ実行に移すとなると,どこからどのように始めればよいのか,そしてそのためにどの程度の投資が必要で,どのくらい有効的なのかを具体的に把握するのが難しいということでした。

  たとえば,ある建物を耐震診断して「この部分を補強すると地震がきても大丈夫ですよ」と言われても,その補強にいくらかかるのか,また投資したとしても都市が抱える地震リスク全体の中でどの程度の経済効果があるのかがはっきりしていないと,なかなか実践に踏み切ることはできないでしょう。そこで考え出されたのが,リスクマネジメントだったのです。これは,国内としてはまだ新しい事業ですが,今後,都市防災の定着に大きな役割を果していくと信じています。

●株式会社イー・アール・エス(ERS)
 昨年11月,当社と応用地質との共同出資で設立。主な事業は,地震リスクを中心とした自然災害リスクと土壌汚染などの環境リスクを対象に,リスクを分析し評価するサービスとリスクの低減・転嫁対策を提案するサービスを提供している。ERSはEngineering&Risk Servicesの略。





都市防災における当社の取組み
地震の大きさを推定する
地震による被害を予測する
診断から対応策を提案・提供する
経済的な損失を評価する
|インタビュー:地震リスクにおける今後の取組みについて