特集:もうひとつの防災

建設会社ができること

災害の多発する日本で
 地震,噴火,津波,台風,洪水,集中豪雨,土砂崩れ……。日本は古来よりつねに自然災害と向き合い,ときに甚大な被害を受けてきた。1995年の阪神・淡路大震災での未曾有の被害は記憶に新しいところであり,三宅島の雄山噴火による島民の苦しみは今なお続いている。また,局地的な集中豪雨などによる都市型水害も近年各地で発生し,「かつて経験のない」災害が日本列島を襲っている。
 自然災害の恐ろしさを改めて認識させる被害が途絶えないなか,災害に対する予測や予防の手段だけでなく,起こってしまった災害に対して迅速な緊急対策工事を行い,「被害を減らす」という意識も高まっている。
 例えば,国土交通省は今年7月,災害復旧の公共工事に,IT,ロボット工学,土木・機械技術を融合した「無人化施工」を本格導入すると発表した。無人化施工は,二次災害が予測される危険な区域での工事を,すべて遠隔操作によって無人の建設機械が行うものである。雲仙普賢岳(長崎県)噴火の復旧工事で初めて導入され,その成果と経験が有珠山(北海道)噴火で活かされた。三宅島での採用も決定し,年内には官民による協議会を発足させ,全国への普及を推進させていく。
 また,予測される噴火災害を地図に示すハザードマップは,観光地が多い火山の麓ではタブー視されてきた。しかし,普賢岳での教訓を元に,有珠山周辺の地元自治体はマップを作成し,昨年の噴火で多いに役立ったという。これを契機に富士山噴火のマップ作成も始められた。「現実を直視した災害対策」が求められているのである。
鹿島の日常から
 鹿島本社ビルの隣りには2台の重機が常駐している。大地震などが起こった緊急時に出動し,赤坂見附から四谷にかけての外堀通りの障害物を取り除き,緊急車両などがスムーズに活動できるように協力するためである。毎年9月には,社長を本部長として行われる震災訓練にも参加する。
 実際の出動機会が訪れないことを祈るばかりだが,万が一災害が起これば,四谷までの「担当区間」内のみの活動とはならないであろう。こうした使命を帯びた2台の重機は,当社の「日常の備え」を示すシンボルとも言えよう。
 当社がもつ技術と機材,そして人材は,前述の無人化施工の実現にも大きく寄与した。雲仙普賢岳では,基礎研究テーマとして数年前から行ってきた技術を応用,水平展開し,試行錯誤を繰り返しながら復旧工事を行った。その経験があったからこそ,有珠山ではより的確で迅速な対応工事を推進し,結果として,災害復旧工事での「無人化施工法」とも言うべき工事の方法が確立できたのである。それは,東海集中豪雨の災害廃棄物処理工事も同様であり,建設会社としての「日常の技術と経験」を想定外の被害に対応させたのであった。
 これまで当社は,予防としての防災技術を数多く研究開発すると同時に,数多くの災害復旧を支援してきた。この特集では,「現実を直視した災害対策」の最近の取組みとして,噴火災害,水害,震災の3つの代表的な自然災害での復旧工事や対策を紹介する。
鹿島本社の隣りに常駐する震災対策用重機
 
鹿島本社の隣りに常駐する震災対策用重機

震災対策用重機



| Chapter1 : 建設会社ができること

Chapter2 :「経験」を応用した無人化施工

Chapter3 : リサイクル技術の災害廃棄物処理

Chapter4 : 復旧活動を最適化する情報システム