特集:もうひとつの防災

復旧活動を最適化する情報システム

復旧資機材管理システム
1995.1.17の教訓
 脳裏から消えることのない1995年1月17日午前5時46分──阪神・淡路大震災は,兵庫県を中心とする広い地域で未曾有の被害となった。マグニチュード7.2の都市直下型大地震は,多数の人命を奪い,都市機能を壊滅させた。
 交通網や上下水道などのインフラにも大きな被害を与え,早期の復旧が求められたのである。被災地の救援・復旧活動は,公的機関だけに頼るのは限界があり,民間の立場からの支援も大きな役割を担った。
 当社でも,地震発生当日に対策本部を設置し,多くの社員が現地入りして救援・復旧活動に取りかかった。人員の派遣は技術者だけでなく,本社健康管理センターの医師や看護婦を含むもので,現地支店の社員を段階的に増強することとなり,「大阪支店」から「関西支店」へと組織変更された。支店の機材センターは救援用物資の補給拠点として対応し,水・食料や燃料,あるいは降雨対策用のブルーシートなどが集積された。人員と物資の輸送支援も地震翌日から行われている。
 復旧用物資のなかでも,重機や建材などの建設資機材は,建設会社に特に求められたものである。当社でも各支店や建設現場が保有する資機材を情報収集し,迅速に投入した。
 建設会社として,建設物の耐震性能を日々向上させていくのは当然の責務である。一方で,被災した建物や土木構造物を復旧・復興する建設工事や,資機材や人材の支援・提供を的確に行う重要性も,阪神・淡路大震災で改めて認識されたといえよう。
阪神・淡路大震災で倒壊した交通インフラの復旧工事(解体撤去)
阪神・淡路大震災で倒壊した交通インフラの復旧工事(解体撤去)
救援物資・人員の輸送を支援したチャーター便
救援物資・人員の輸送を
支援したチャーター便
支店内に集積された非常物資
支店内に集積された非常物資

最大加速度分布
最大加速度分布
地震を設定し,地震動(最大加速度,加速度応答スペクトルなど)を算定する。ボーリングデータによる詳細な地盤情報から広域の地震強さを高精度で評価する
個別構造物の被災度判定
個別構造物の被災度判定
地震被害評価はメッシュ単位(約500×500m)および町丁目単位で建物の被害率と延焼率を測定する。地盤情報と,建物の構造と階数を考慮して,個別の被災度を判定する

復旧資機材の輸送ルート評価
復旧資機材の輸送ルート評価
被災施設復旧のために,交通手段や道路の閉鎖状況を考慮して,目的地までの最適ルート,輸送時間を算定する
施設・人員・資機材の管理
施設・人員・資機材の管理
被災施設復旧のために必要な人員や資機材情報を管理する

「復旧資機材管理システム」による震災復旧支援の流れ
次世代GISモデル事業

 復旧資機材管理システムは,GISを利用した「高精度地震被害評価システム」の開発に取り組むコンソーシアムに,当社が参加して実現したものだ。コンソーシアムは当社のほかに,東京海上リスクコンサルティング,東京電力,東電設計,野村総合研究所,三菱商事から構成され,1998年に発足した。通産省(現・経済産業省)の同年度一次補正予算の一環として実施された「次世代GISモデル事業」の成果である。
 高精度地震被害評価システムは,精密な地震動評価システムを基軸に災害対策を支援するもので,「被災者数評価システム」「従業員参集評価システム」「支払保険評価システム」「復旧資機材管理システム」「電力被害想定システム」の5つのサブシステムで構成されている。
 異分野の企業からなるコンソーシアムにおいて,各社のノウハウや技術力が集まり,高性能かつ多面的なシステムが形成されただけでなく,各社が相互に触発され,それぞれの技術のポテンシャルも一層高まることとなるだろう。



Chapter1 : 建設会社ができること

Chapter2 :「経験」を応用した無人化施工

Chapter3 : リサイクル技術の災害廃棄物処理

| Chapter4 : 復旧活動を最適化する情報システム