特集:多様化するNATM
地底500mの巨大な大空洞 神流川地下発電所工事(発電所工区) ●世界最大級の揚水式発電所 大自然に囲まれた群馬県多野郡上野村。長野県との県境にあるこの山奥の地中深くでは,地下発電所の空洞掘削工事が超大断面NATMにより進められている。 当発電所は純揚水式の地下発電で,空洞に設置した6台の発電機が稼動すると,最大出力270万kwを誇る世界最大級の揚水式発電所となる。これはおよそ標準的な家庭の電力100万世帯を賄う量である。 |
●卵形の大空洞
この発電所は断面が“卵形”となるよう掘り進められている。従来の地下発電所は“きのこ形”の形状が多かったが,非常に高い地圧下では,力学的に卵形が安定している。卵形は,当社が施工した二つの地下発電所,今市発電所,野川発電所に継ぎ3番目。しかもその内部は非常に大きい。高さ52m,幅33m,長さ216m。新宿三井ビルが横にすっぽり入る大きさだ。 |
●1本のトンネルから切り拡げる
工事は1997(平成9)年から始まった。山裾から工事用トンネル(機器搬入坑)をNATMで進み,地底500mの空洞最上部に到達。ここから大空洞の上部となるアーチ部の空洞をつくる。まず中心となるトンネル(導坑)を掘り,そこから左右の岩盤を切り拡げる。 次に空洞の側壁部。上から11段階にわけ,1段毎に掘り下げていく。その1段の掘削には,地山の緩みを極力少なくするためブロック分割工法が使われている。これは中央部を先に掘削した後,その左右で数箇所のブロックに分割して掘削する。 巨大な空間のため,掘った岩盤の量も半端ではない。総掘削量は22.1万m3,ダンプトラック55,000台分にも相当する。これらの搬出されたずりは,下部ダムに運ばれコンクリートの骨材として再利用されている。 |
神流川発電所新設工事(1期)のうち
土木工事(発電所工区) <工事概要> |
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場所 | 群馬県多野郡上野村樽原 |
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発注者 | 東京電力 |
設計 | 東京電力 |
規模 | 発電所本体(高さ52m×幅33m×長さ216m,掘削量221,000立方メートル)
周辺トンネル、排水路、屋外開閉所 |
工期 | 1997年3月〜2005年6月 (関東支店JV施工) |
●1,200t/m2の地圧に耐える技術
PCアンカーで壁面を締め付け,岩盤を補強 地底500mの発電所の岩盤には,想像を絶する力がのしかかる。1m2あたり1,200t。このため卵形の空洞を採用することで岩盤の地圧を負担し,空洞を保持する。さらに岩盤を補強するためにPCアンカーを壁面全面に打ち込む。PCアンカーは壁面から直角にアンカーを挿入,根元をセメントミルクで固定させ,9tの力で締め付けることで壁面を抑える。こうしたアンカーの総数は3,500本にも及ぶ。 |
●揚水式発電所とは?
夜間余った電力を有効活用 揚水式発電は,夜間需要が少なくなった原子力・火力発電からの電力を利用し,水を下部調整池から上部調整池へ揚水し,電力需要の多くなる昼間,下部調整池に落下させることで電力を発生させる。平成10年エネルギー別発電所設備出力によると,揚水式発電は,石油,LNGなどの火力発電や原子力などの総出力の1割強となっている。 |
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