特集:カラーコーディネートの探求 |
| 鹿島ケーススタディ2 フジテレビ 〜色彩が生み出すアメニティ空間〜 建築空間のビジュアルコミュニケーションにおける，カラーコーディネートの持つ役割は決して少なくない。色彩による視覚的な演出でその場の空気が作られてしまうからだ。鹿島が手がけたフジテレビ本社ビルのカラーコーディネートは，色彩の持つ重要性を端的に示している。 |
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| 四半世紀の歴史で培われた“グラフィック”のパワー 建築へのニーズの多様化とともに，建築物周辺のデザインの範囲や内容も急速に変化している。中でも，人と環境，人と空間の好ましい関係を創るグラフィックデザインの役割は大きなものになりつつある。建築空間の視覚的演出，サインデザイン，CI，ロゴマーク，広告など，グラフィックが関与する領域は一層の拡大を見せている。近年ではCGをはじめとしたデジタルデザインへのニーズも飛躍的に高まっている。建設会社の中で社内に“グラフィックチーム”を抱える例は極めて少ないが，当社は1974年にチームを立ち上げ，以来，様々な媒体や素材を通して，ビジュアルコミュニケーション(企業理念等のビジュアル化)をトータルにコーディネートしてきた。このビジュアルコミュニケーションという幅広い分野の中に，“色彩計画”，いわゆるカラーコーディネーションの領域があるわけだ。 “パーティーカラー”で楽しさを演出する 当社は自社のマークや，ホテルや企業のロゴマークやサインデザインをはじめ，過去，グラフィックの分野で数多くの実績を築き上げてきたが，1997年完成したフジテレビ本社ビルにおいても，当社のカラーコーディネート力が遺憾なく発揮されている。建築家・丹下健三氏の設計によるフジテレビ本社ビルは，斬新な意匠を凝らした建築物として東京・お台場の新名所となっているが，その表情に豊かな個性を添えているのが当社の展開したサイングラフィックである。 ｢看板や銘板，誘導サイン，扉や標識にいたるまで，サインをトータルにコーディネートしました。基本的なコンセプトは“楽しいサイン計画”。つまり楽しさを表現することを最大のテーマにしました。そのために，原色を基調とした明るい“パーティーカラー”で統一したのです。フジテレビは，バラエティー番組の創始者的なテレビ局だけに，例えれば一年中文化祭をやっているようなテレビ局というイメージがあった。そんなテレビ局だからこそ，パーティーのようにアメニティ性のある場の雰囲気が大切と考え，カラーコーディネートを進めていきました｣(渡辺)。 採用された“パーティーカラー”は，ニューヨークのデザイン会社｢ペンタグラム｣とのコラボレーションから生まれたものだが，局内のサインは心弾む遊び心に溢れた，ポップな色調で構成されている。 ｢カラーコーディネーションのその目的は，その場の空気を作るためにあると思う。つまり色によって，そこにどんな空気を生み出すかが問われてくるのです｣(同)。 色が人の心をほぐし，癒していく 全体のサイングラフィックと同時に手がけていたのが，報道センターのカラーコーディネートである。報道センターは他のスタジオと違い，24時間眠らない仕事環境であり，時として緊迫した場面も発生する。またガラス越しに見学者に開放されているスタジオという特徴を持つ。｢働く人，見学者両者にとって心地のいい空間であることが大切であり，それを実現するための色彩は何であるかがテーマになりました｣(同)。 そして採用されたのは“レインボーカラー”。フジテレビにアクセスするために通過する｢レインボーブリッジ｣にちなんだこともあるが，｢働く人は元気に仕事ができ，見学者には印象に残るスタジオ｣の色彩を検討した結果であった。単にレインボーカラーを施したのではなく，レインボーをグラデーションで展開，虹色の明快さと淡さを併せ持った印象深いグラフィックに仕上がっている。 ｢実は，報道スタジオの空間の約80%はホワイト系のカラーなのです。ですから，私たちが提案したレインボーカラーはアクセント，いわば“わさび”のようなものだと思う。でもそれが，空間に与える影響は極めて大きいのです｣(同)。 フジテレビにおいて当社が展開した“パーティーカラー”や“レインボーカラー”には，確実に人の心にビビッドに響く躍動感がある。 ｢コンセプトの基本に常にあったのは，楽しい雰囲気の演出。私はこの楽しさという感情が人の心をほぐしていくものだと思う。そしてそれは，ストレスの多い現代社会の中で，心の癒しに繋がっていくものだと思いますね。実際にニュースやバラエティ番組の画面に登場する機会があるので，ぜひ注意して見てみて下さい｣(同)。
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