特集:カラーコーディネートの探求 |
| 鹿島ケーススタディ3 ホテルモントレ 〜ヨーロッパの空気を色彩で演出〜 どんな建築物でも，そこで採用される色彩には，必ず何かしらの意味や目的を内包している。くつろぎの場として提供されるホテルでは，一層色彩の持つ意味は大きい。ヨーロピアンテイストを追求してきた｢ホテルモントレ｣シリーズで，今回はフランス・パリの薫りを演出するカラーコーディネーションが展開された。 |
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| ヨーロッパのプチ・ホテルのイメージを具現化 このほど，東京・銀座の1丁目と2丁目に，当社が企画から設計管理まで担当した，｢ホテルモントレ銀座｣と｢ホテルモントレ ラ・スール ギンザ｣がオープンした。東京・山王の｢ホテルモントレ山王｣(1984年)を皮きりに，｢ホテルモントレ｣シリーズはスタートしたが，同シリーズはいずれもヨーロッパの伝統的な様式をモチーフにしているところに特徴がある。｢モントレ神戸｣はイタリア，｢モントレ札幌｣はイギリス，｢モントレ長崎｣はポルトガルといった具合に，ヨーロピアンスタイルを全面に押し出しており，そのため，そのカラーコーディネーションも，“ヨーロッパの空気”を彷彿させるイメージで貫かれている。アメリカンタイプの大型ホテルでもなく，無味乾燥なビジネスホテルでもなく，家具調度を含んだインテリアまで徹底した，プチ・ホテル。ヨーロッパ映画に登場する，表通りから一歩入った路地に面して建つ小さなフロントを持ったオシャレなホテルをイメージしてもらえればいい。今回，銀座にオープンした2館のコンセプトは，フランス・パリ。その薫りを醸し出すカラーコーディネーションが展開された。 パリのアパルトマンの空気を銀座に運ぶ 銀座にオープンした2館，｢ホテルモントレ ラ・スール ギンザ｣と｢ホテルモントレ銀座｣は姉妹ホテルと位置付けられており，ヨーロッパ旅行を何度も経験しているような若い女性がターゲットとなっている。 ｢ホテルモントレ ラ・スール ギンザは，パリのアパルトマンをイメージしています。色彩はエレガンスな雰囲気の表現に力を注ぎ，同時にパリジェンヌを想定した軽やかさの表現にも努めました｣(橋本)。 そのために採用された基調色がミントグリーンである。家具も白木やイエローなど全体的に淡いトーンでまとめ上げた。一方｢ホテルモントレ銀座｣は，同じくパリのアパルトマン風ながら，ナチュラルなイメージが強い。｢気品のある落ち着いた雰囲気を強調しています。“ナチュラルシック”ともいうべき空間の演出を考えました。籐製の家具調度とダークな色調のフローリングのコントラストをはじめとした，ブラウンやグレーといった色遣いを中心に展開しています｣(同)。 さらに新機軸として大正浪漫の雰囲気を添えた。もちろんヨーロッパのムードが元になっているが，レトロジャパンとのミックスが新鮮な空気を生み出している。 ウィーン世紀末を演出する色彩はベージュと金 当社が手がけた最も新しい｢ホテルモントレ｣シリーズが，｢ホテルモントレ エーデルホフ札幌｣である。テーマは19世紀末のウィーン。ヨーロッパ文化史に名を残す｢ウィーン世紀末｣へタイムスリップした雰囲気を演出した。｢あの時代，アートは様式美から機能美への過渡期でした。つまりモダンな部分が入ってきている。世紀末とモダン，それを表現することがカラーコーディネートのテーマとなりました。そこには19世紀への追憶と新世紀への期待が入り交じっているのではないか。そこで私たちが選んだ基調とした色彩は，明るいベージュ系と金でした｣(同)。 また，ブルーとホワイトのテーブルクロスで演出されたレストラン｢ワーグナーハウス｣は，その清楚さの中に世紀末の薫りが微妙に醸し出されている。これら｢ホテルモントレ｣シリーズのコンセプト作りは徹底しており，企画段階でヨーロッパを巡り，家具調度品の調達はもとより，実際にヨーロッパの薫りに触れることで，カラーコーディネートをはじめとした空間演出が展開されている。地域によって個性化を図っているため，シリーズとしての共通のデザインはあえてとらない。緻密で的確な色彩計画が，エキゾチックなヨーロッパ各国の空気を運ぶ一翼を担っている。
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